犬や猫のおしっこが出ていない!命にかかわることもある尿道閉塞とは?
あれ?そういえば全然おしっこが出ていないかも?
今回はその要因のひとつ、尿道閉塞について解説します。
尿道閉塞とは
そもそも「尿が出ない、あるいは出づらい」という症状には様々な要因があります。
例えば結石や膀胱炎による炎症産物が詰まる、環境の変化により動物自身が我慢している、腎臓や心臓疾患によりそもそも尿が作られず膀胱に溜まらない、ヘルニアや神経症状によって排尿機構がうまく機能していないなどが挙げられます。
尿道閉塞とは、膀胱に溜められていた尿を外へ排出するための経路である尿道が何らかの原因で詰まり、排尿困難な状態をいいます。
尿がでない状態が続くと全身状態に影響を及ぼし、閉塞の解除や治療が遅れてしまうと命にかかわる危険な症状です。
尿道閉塞の症状
名称からも想像できるように最もわかりやすい症状は尿が出ていない、あるいはまとまっての排尿がないといったものです。
動物自身は尿意を感じていることが多いため、トイレにいって排尿姿勢はとっているものの、トイレには排泄をした痕跡がない…ということもあります。
その他には尿の出口である陰茎や外陰部をしきりに舐めている、痛みを伴う場合には排泄時に鳴くといった症状がみられることがあります。
また排尿障害によって急速に腎臓の機能が障害される(急性腎障害)ことにより、体の恒常性を担う電解質バランスが崩れ、高カリウム血症や尿毒症といった命に関わる疾患を引き起こすこともあります。
症状としては元気や食欲が低下する、嘔吐する、ぐったりするなどがあげられます。
原因
尿道閉塞はいくつかの原因があります。
・膀胱にあった尿結石が排出の際に詰まってしまった場合
・炎症などにより粘液や細胞、炎症産物により尿道栓子が形成された場合
・外傷や腫瘍により尿道が塞がっている、あるいは狭窄している場合
・前立腺肥大や腫瘍により押されて尿道が潰されている場合
尿道閉塞が疑われる際の検査
身体検査
まずは膀胱に尿の蓄積があるかどうかを触診します。
蓄尿があるにも関わらず排尿がない、ということは閉塞が疑われます。
一方でそもそも蓄尿がないという場合には、他の病気による要因も考えなくてはいけません。
また尿道閉塞により腎機能が障害されることにより、発作や不整脈などの症状がみられることがあるため、意識レベルや心拍の確認なども欠かせません。
画像検査
レントゲン撮影やエコー検査で尿結石や腫瘍の有無、排尿に関わる臓器の構造に異常はないかを調べます。
尿結石はある程度の大きさがあればレントゲンに写ることが多いですが、成分によっては写らないこともありますので、両方の検査を行うことが大切です。
血液検査
前述したように尿道閉塞では急性の腎臓障害が引き起こされていることがあります。
腎臓は老廃物を尿として排泄する以外にも、身体のミネラルバランスや血圧の調整やホルモン分泌など身体機能を維持するための様々な役割を担っている重要な臓器です。
腎臓のはたらきについてはこちらでご紹介しています。
腎臓や全身への影響やその時点での状態を把握し、適切な治療プランを考えるために血液検査を実施します。
尿検査
尿道閉塞を引き起こす要因として結石や炎症産物、腫瘍をあげました。
尿の性状を調べることで、膀胱内の状態を把握することができます。
例えば結石の原因となる結晶が出ている、細菌感染や炎症の有無や腫瘍があれば多量の細胞が混じっていることもあります。
詳しい検査内容についてはこちらをご参照ください。
治療
まずは緊急的な処置として尿道の閉塞を解除します。
カテーテルや生理食塩水などを使用して膀胱へ結石や栓子を押し戻し、尿の排出経路を確保します。
長時間の閉塞により影響を負担がかかっていた膀胱や腎臓は一時的に正常に機能しないこともあるため、数日はカテーテル留置と点滴を行う入院治療が必要です。
前述した検査結果の内容によって尿路ケアや腎臓ケアなど食事療法を併せて実施します。
カテーテルが設置できない場合や、閉塞を繰り返す場合には会陰尿道瘻増設術を検討する必要があります。
この手術ではより直径の太い尿道を開口させることで閉塞再発のリスクを減らすことができます。
日頃から対策を
尿道閉塞は決して少なくない病気です。
特に尿道が細く蛇行している雄猫に発症することが多く、飲水量が減る冬場は注意が必要です。
しっかりお水を飲めるよう水場を増やす、新鮮なお水を用意するなど工夫をしましょう。
また排泄自体を我慢してしまわないよう適切な数を用意し、シートや砂は汚れていたら片付けて清潔に保ちましょう。
トイレトレーも定期的に丸洗いするのが大切です。
多頭飼育している際はどの子がどこでトイレをすることが多いのかを、日頃から観察しておくとよいですね。
猫のトイレ環境についてはこちらで詳しくご紹介していますので、是非ご覧ください。
尿道閉塞は時に命にかかわる緊急疾患です。
閉塞時には速やかな解除が必要ですので、24時間以上排尿がないときは体調に異常がなくとも動物病院を受診しましょう。
トイレ環境や飲水環境に関して疑問や不安な点が少しでもあれば、お気軽にスタッフまでお尋ねください。
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