心臓病の症状 ~肺水腫~
心臓病で起こる重篤な症状の一つに肺水腫が挙げられます。
肺水腫は、本来は空気が出入りする肺に水分が貯まってしまい呼吸困難を起こしてしまう病態です。
<原因>
犬の場合、心臓が原因の肺水腫(心原性肺水腫)の多くは、慢性心臓弁膜症による僧帽弁閉鎖不全症から起こります。
この病気では左心系に負担がかかり、左心房→肺静脈→肺の毛細血管と圧が上昇し、血液の液体成分が浸み出し発症します。
肺水腫は、心臓が原因ではない場合もあります(非心原性肺水腫)。
非心原性肺水腫は、肺の炎症や腫瘍そして発作などいろいろな原因がありますが、血管の壁の変化によって血液の液体成分が浸み出してきて発症します。
肺水腫はこのように心原性・非心原性とありますが、多くは心臓病が原因である心原性です。
<症状>
肺水腫になると、酸素を取り入れ二酸化炭素を体の外に出すガス交換が上手くいきません。
そのため、少しでも空気を取り込もうとし呼吸が浅く早く、また首(気管)を伸ばして胸を拡げる姿勢をとります。
湿った咳を伴なうこともあり、呼吸困難やチアノーゼを起こし亡くなってしまう場合もあります。
『僧帽弁閉鎖不全症』では、左心房と左心室の間にある僧帽弁が変性して上手く閉まらなくなり血液が逆流してしまいます。
逆流が重度になると、左心房→肺静脈→肺の毛細血管と圧が上昇し、肺のうっ血が起こり肺水腫が発症します。
<治療>
血圧や循環が保たれている時には、利尿薬と血管拡張薬を中心に治療していきます。
ただし、循環が維持できていない状況の場合には、強心薬などの点滴も必要になっていきます。
<見通し>
重症度や治療反応によって異なり、入院中に亡くなってしまうケースも少なくありません。
重度の肺水腫の生存期間中央値(この病気で50%の犬が亡くなった時点までの期間)は8〜9ヶ月と言われています。
<予防>
僧帽弁閉鎖不全症であれば肺水腫になる前に、通常は心雑音が聞こえます。
心雑音が聴こえ始めたら、定期検診をして行き、必要に応じてレントゲン検査や心臓超音波検査で心臓や肺の状態を見ていきましょう。