心臓病の症状 ~胸水~
心臓病で起こる重篤な症状の一つに胸水貯留が挙げられます。
胸水貯留は、胸腔(胸壁に囲まれていて心臓や肺などの臓器が入っている空間)に異常な量の水が貯まってしまい、呼吸困難を起こしてしまう病態です。
胸水は、正常でも胸腔内に少量存在します。
肺が動く時に胸壁に摩擦が起こらないように潤滑剤のような役割をしているからです。
この胸水が、作られすぎたり吸収が上手く行かなかったりとバランスを崩すことがあります。
その場合、必要以上の胸水が胸腔内に貯まり、肺は圧迫され膨らむことができない状況になります。このような状態を胸水貯留と言います。
胸水貯留は、心臓、肺などが入っていて胸壁に囲まれている空間である胸腔に液体が貯留します。
肺は胸水で上方に圧迫され押し上げられ、心臓は胸水で囲まれレントゲンを撮影した場合に心陰影は分かりづらくなります。
胸水貯留は、猫の心臓病で起こりやすい症状です。
<原因>
猫の場合、心臓が原因の胸水貯留の多くは心筋症などからの左心不全によって起こりますが、そのほか、右心不全や心膜疾患などからも発生します。
心臓が原因ではない胸水貯留もあります。
低アルブミン血症、猫伝染性腹膜炎・膿胸といった感染、外傷、肺葉捻転、腫瘍など色々な原因が挙げられ、またリンパ液が漏れて起きる乳ビ胸などもあります。
胸水は、漏出液・変性漏出液・滲出液といった性状に分類され、胸水貯留を引き起こす基礎疾患によって異なります。
胸水の性状により詳しい原因、そして病気を特定していきます。
心臓性の胸水性状は変性漏出液や漏出液であり、そのほか心臓超音波検査などで心臓疾患を確認していきます。
猫で多い肥大型心筋症では、主に左心室壁が分厚くなり左心室が拡がりにくくなります(拡張障害)。
拡張障害が重度になると、左心室に血液が入りにくくなってしまうので、左心房、肺静脈と圧が上昇しうっ血が起こり胸水貯留が発症します。
<症状>
・呼吸が苦しくなる 早い呼吸をする 口を開けて呼吸をする
・咳
<治療>
胸水が貯留していることで呼吸状態が悪い場合は、胸水を抜くことが第一選択になります。
しかし、胸水を抜いて完治するわけではありません。
胸水が貯留する原因となった心臓疾患の治療をしていきます。
胸水を抜くのは対症療法であり、原因疾患の治療なしに胸水の貯留量を減らすもしくは胸水の貯留をなくすことは、困難と考えられます。
<見通し>
予後は、原因となった心臓疾患の状態や治療反応に依存し、入院中に亡くなってしまうケースも少なくありません。
肥大型心筋症の猫では、胸水や肺水腫などのうっ血性心不全を起こした場合の生存期間中央値(この病気で50%の猫が亡くなった時点までの期間)は3ヶ月〜1.5年程度と言われており、そのほかの心筋症ではさらに厳しくなります。
<予防>
猫の心臓病を症状が出る前に防ぐのは、困難です。
無症状だったのに突然呼吸困難になってしまうケースはとても多いです。
心筋症が好発とされている猫種や定期検診でバイオマーカーが高値だった場合は、超音波検査など早めの心臓検査をお勧めします。