目の構造と機能 〜動物と人の目って何が違うの?〜

ペットの可愛らしい目に見つめられるととても癒されますよね。動物にとって目はとても重要であり、物の認識、光の認識、色の識別などさまざまな役割があります。しかし意外にも私たち人間と同じような目を持つ動物でも、構造や見え方が少し違っています。また、皮膚と同じように、目で見て異常がわかる臓器の一つでもあります。今回はそんな「目」について勉強していきましょう。

 

構造について

犬や猫をはじめとする動物の目の構造は人と非常に類似しています。球体の眼の構造を保つ働きを担っているのが3つの膜です。外側より、強膜、脈絡膜、網膜であり、これら3つの膜が外的な刺激などにより構造破綻などを起こさないように目を守ってくれています。目に入った情報や光は角膜→水晶体→硝子体→網膜→視神経→脳という順番に伝達されます。これらは人と同様ですが、構造的に異なる部分もあります。それは瞬膜(第3眼瞼)と輝板(タペタム)です。それぞれ人は持っておらず、瞬膜はまぶたと同様、外部刺激から眼球を守り、輝板は動物の目が光る原因であり、光を増幅させる役割を持っています。そのため、輝板を持つ動物は暗闇での行動が可能となります。

さらに、動物種によって異なる構造を持つのが瞳孔です。いわゆる黒目です。瞳孔の形は虹彩筋の違いにより動物種により様々であり、犬や人は丸い形、猫は縦長、山羊や羊は横長の瞳孔の形をしています。

 

機能について

目の機能はよくカメラに例えられます。強膜は角膜と共に眼球を形成するためカメラのボディの役割があり、虹彩で目に入る光の量を調整し、水晶体がレンズの役割を果たし、毛様体でピント合わせをし、眼瞼がシャッターに相当します。目に入ってきた情報(ものの形や色など)や光は網膜というフィルムに伝達されます。このように目は高性能カメラと同様な役割を果たしています。

次に各部位における役割のお話です。瞼は表側が皮膚、裏側が結膜からなり、それら境界部にはマイボーム腺が並び涙腺も存在します。マイボーム腺からは油分が分泌され、涙腺からは水分が分泌され、結膜からはムチンが分泌され、これら3つが合わさったものが涙となります。涙は、水分でありながら程よく油分も持つため、目の表面の潤いを保つ役割を果たしています。結膜は瞼の裏側(眼球結膜)と眼球の白目部分(眼球結膜)からなり、前述の通り涙の成分を分泌して目を保護し、目の動きを円滑にする役割があります。

角膜は外部からの異物侵入や刺激から目を最前線で守っています。ぶどう膜は虹彩・毛様体・脈絡膜で構成されており、目に栄養や血液を供給する役割があります。さらに毛様体は栄養の源である眼房水を産生し、眼房水の圧力により目の大きさを維持しています。水晶体はレンズであり、網膜に焦点を合わせ、情報を網膜に伝達し、網膜はフィルムの役割を果たし、情報を受け取ります。受け取った情報は、脳との伝達通路である視神経に渡されます。

このように目は各部位で様々な役割を果たしています。

 

視力や色覚について

犬猫の視力は0.1〜0.3と言われており、人の視力よりかなり低いです。そのため、対象物はぼんやりと見える程度ではっきりとは見えていません。一方で動体視力は人よりも発達しており、動いている対象物にピントを合わせる能力はとても優れています。野生で生き抜くための本来備わっている能力と言えます。犬猫はレンズの役割を持つ水晶体が人よりも厚いとされており、その理由としては、暗い場所でも少しの光を目に取り込み、見えやすくするためとされています。さらにピント合わせの役割を担う毛様体の働きが人よりも劣っているため、視力が低いと言われています。

犬猫の全体視野(両目で見ることのできる視野と片目で見ることのできる視野を合わせたもの)は人よりも広く、これも野生で備わった能力と言えるでしょう。獲物や敵を広い視野で察知し、素早く次の行動を起こすために必要な能力ですね。

次に色覚についてですが、人の網膜には色を感じる細胞である錐状体があり様々な色を識別できます。しかし、犬猫の網膜には錐状体がほとんどありません。人では、青・緑・オレンジに反応する3種類の錐状体が存在し、これらが混ざり合うことにより様々な色を認識することができます。一方で犬猫の錐状体は青と黄にのみ反応すると言われており、人のように赤や緑を認識することは困難とされています。

このように、犬猫の人よりも視力や色覚は劣るとされています。しかし、目以外の嗅覚や聴覚などが人よりも非常に発達しているため、生活する上で何ら支障はありません。

涙と涙やけについて

涙とは涙腺から分泌される水分、マイボーム腺からの油分、結膜からはムチンが合わさったもので眼球の潤いを保つために欠かせない物質です。その他にも、異物(ほこりやゴミなど)の侵入があっても涙で目の外へ押し流したり、微生物(細菌や真菌など)の繁殖を防ぐなどの役割もあります。

涙やけは流涙症とも言われ、涙で濡れた目頭の毛が茶褐色に変色してしまうことです。濡れた毛は微生物の繁殖や涙の成分の酸化によって変色を起こします。

 

涙やけの原因は様々です。涙を目から鼻に通す鼻涙管の閉塞、逆さまつげや本来の睫毛のある場所ではないところから生えているまつ毛(異所性睫毛)などのまつ毛の異常、短頭種(シーズーなど)で目と鼻の間の毛が角膜に接触しているような構造上の問題、食事によるアレルギー反応などが挙げられます。涙やけは解決がムスカしいこともある目のトラブルですが、お困りの際は獣医師にご相談ください。

 

まとめ

このように、動物の目は私たちの目と似ているようで、違う部分もあります。普段の生活をしていく中で、目脂が多い、しょぼしょぼする、赤い、白くなってきたなど比較的発見してあげやすいのが目です。些細なことでもご不安な点があれば獣医師や動物看護師にご相談ください。

この記事を書いた人

石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。