みんな一度は経験したことがある血液検査。動物病院の採血ってどうやってるの?

今回は『採血』についてお話します。健康診断の血液検査や春のフィラリア検査で採血をした犬や猫も多いことでしょう。私たち人は腕からの採血が一般的ですが、犬や猫はどこからどのようにして行っているのでしょうか。自分よりも小さい犬や猫が採血をする、と聞くとご不安に思う方もいるかと思います。

そこで今回、当院ではどのように行っているのか、どのような工夫をしているのかお伝えし、少しでもご家族のご不安な気持ちを軽くできれば幸いです。

 

人の採血では見えている静脈どこからでも可能であるため、手の甲や足から採血する場合もあります。しかし犬や猫では毛で覆われているため、限られた所から採血を行っています。

それでは早速紹介していきましょう!

 

1.準備するもの

まず採血を行う時に必要なものは、注射器と採血管(採血した血液を入れる容器)です。採血管には様々な種類があり、行う検査に合わせて準備しています。

採血量は検査内容によって前後しますが、おおよそ1~5ml程度です。

人の健康診断では一般的に12ml程採血することが多いので比べてみると、とても少ないですね。

犬や猫は人と違い、動かずにじっと大人しくしていることが苦手な子も多いので、安全に手早く採血を行うために動きを制限する『保定』をします。

『保定』は犬猫が採血中に動いてしまうことによる犬や猫自身の怪我の防止や採血者と保定者の安全を守ることにもなります。

採血をする時に不安な気持ちになる犬や猫もいるため、当院ではちゅーるなどのおやつを使ったり、優しく声を掛けながら頭などを撫でたりして、少しでも不安な気持ちを和らげることができるように心がけています。

他にもタオルを使って顔を隠したり、フェリウェイ(詳しくはコチラをご参照ください。)という猫に安心感を与えるフェロモンのスプレーを使用しています。

採血後はたくさん褒めたり、おやつをあげたりして採血をしたことが嫌な事ではなく、良い記憶として残るようにしています。

 

2.採血と保定

次にどのように採血と保定を行っているのか紹介します。血管を見つけやすくするために、一時的に血流を止め、血管をうっ血させることを駆血といいます。

人では駆血をゴムバンドで行うのが一般的です。犬や猫でも駆血をしながら採血を行いますが、保定者の手で駆血を行うことが多く、ゴムバンドを使用するのは一般的ではありません。

犬の採血は後ろ足の外側伏在(がいそくふくざい)静脈、首の頸静脈、前足の橈側皮(とうそくひ)静脈から実施し、猫の場合は、後ろ足の大腿静脈、首の頸静脈、前足の橈側皮静脈から実施します。

犬と猫では後ろ足の採血部位、さらには採血姿勢も異なります。

犬では立ったままの状態で後ろ足からの採血を、猫では横になった状態で後ろ足からの採血を行います。犬も猫も後ろ足から採血をする機会が最も多いため、ご家族が採血をしているとこを見ることも多いかと思います。

 

まず、犬の後肢からの採血についてお話しします。

頭、肩、腰が動かないように保定を行ない、駆血は後肢を持っている手で膝裏を圧迫します。

犬を保定する時には以下のことに気を付けています。

・頭を撫でて気を逸らして、振り返らないようにする

・犬の身体を自分の身体に密着させ動きを制限する

・座らないようにする

・採血する足が曲がらないようにする

 

次に猫の後肢からの採血についてお話しします。

写真中の赤い線に血管があります。

猫をごろんと横に寝かせた状態で行い下側になっている足の内側から採血し、駆血は犬の後肢と同様に膝裏あたりを圧迫します。保定で気を付けていることは、犬の場合と少し異なります。

猫を保定する時には以下のことに気を付けています。

・頭を撫でて気を逸らすし、振り返らないようにする

・猫の身体を自分の身体に密着させ前足などの動きを制限する

・採血する足が曲がらないようにする

・採血をしていない後ろ足や尾が採血の妨げにならないようにする

 

次に犬や猫では首の頸静脈から採血することもあります。

写真中の赤い線に血管があり、位置は犬も猫もほぼ同様です。

「首から採血しますね。」と聞くと驚かれる方もいるかと思います。検査項目が多くの血液を必要とする場合や、体格が小柄だったり、血管が細いなど、後ろ足の血管での採血が難しい場合など、動物では頚静脈からの採血は一般的に行われています。

駆血は足からの採血とは違い、採血者が自身で行います。

この時に気を付けているポイントは首がねじれないこと、後ろに反らせすぎないことです。頸部からの採血のメリットは、後ろ足での採血に比べて血管が太く、血圧も高い為、短い時間で採血を済ませることができ、犬や猫にとってもじっとしている時間が短いことで負担が軽くなることです。

採血にかかる時間が短いことで血液が固まることもなく正確な検査結果を得ることができます。

 

次に前肢の橈側皮静脈から採血することも可能ですが、静脈から点滴を入れる際に使用する血管のため、当院ではこの部位からの採血はあまり行いません。

静脈点滴を入れる際の保定の注意点としては、肘を引かれないようにすることです。

すべての採血後の止血は保定スタッフの指、もしくは乾綿と伸縮包帯を使って行います。

採血部位からの出血がないか、確認をしてからご家族にお返ししております。

血が止まりにくい場合などは、伸縮包帯を巻いたままの状態でお返しすることもございます。

その場合はスタッフからの指定の時間に外していただく、もしくはご帰宅後に外していただいております。

伸縮包帯を巻いている足を気にしてかじってしまうなどありましたら、近くのスタッフに声をかけてください。また、伸縮包帯を巻いたままにしていると血行が悪くなってしまう為、忘れずに外してあげましょう。

 

採血で一番頑張っているのは犬や猫たちなので、終わった後にはしっかりと褒めてあげてくださいね。

わからないことがあるとより不安に感じることと思いますので、この紹介で少しでも解消されれば幸いです。この他にご不明点などがございましたら、いつでも獣医師や動物看護師にお尋ねください。

この記事を書いた人

鈴木(動物看護助手)
ご家族と他愛のない世間話をするのが好き。特にゲームの話題になるとマシンガントークが炸裂する。一緒に暮らしている猫2匹は元保護猫でスタッフの縁でお迎え。子猫の頃に比べると大きく成長したが、甘えん坊な性格は変わらず。HPに載せている画像にもたまに登場している。