ペットが涙を流す理由とは?目の病気のサインかもしれません

人は嬉しいときや悲しいとき、目にゴミが入った時などに涙が出ます。犬や猫も涙を流しますが人と同じ理由ではなく、目の病気のサインかもしれません。

 

涙を流すのはなぜ?

涙には目の乾燥を防ぐことや、外界の刺激や感染から目を保護する、酸素や栄養を供給するなど、様々な役割があります。

涙を流す病気には大きく、涙の排出経路に問題があるもの、涙が過剰に産生されるものに分けられます。

 

涙の排出経路の問題

まず、涙はどこで作られどこへ流れていくのでしょうか。涙は、涙腺や第三眼瞼腺(瞬膜腺)で作られた後、瞬きと同時に上下の涙点から涙小管に引き込まれ、図の矢印のように鼻へと排泄されます。

ところが、涙点が先天的に欠損または閉塞している場合、瞼の異常や外傷によって涙点が正常の位置からずれたところにある場合に正しく涙が排泄されません。

同様に炎症や腫瘍などによって鼻涙管が閉塞した場合も、涙があふれます。

このような場合には鼻涙管が詰まっている原因を調べるためのより詳しい検査が必要となる可能性があります。

鼻涙管の閉塞または狭窄の治療としては、原因となる疾患の治療を行うことが第一です。先天性の場合は手術を行って涙の排出経路を確保する必要があります。

また、排出経路に異常はなくても先天的に瞼が眼球側を向いてしまう疾患(眼瞼内反症)などによって涙が正常な排出経路をたどれず、目からあふれてしまう場合もあります。

これを「流涙症」といいます。

 

涙が過剰に産生される

涙が過剰に産生される病気として、睫毛の疾患が挙げられます。「逆さ睫毛」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これは、睫毛が正しい向きに生えていないため常に目を刺激してしまう病気です。その刺激により、涙が通常よりも多く産生されてしまいます。

治療としては、原因となる睫毛を定期的に抜く一時的な方法と、外科的に毛包を除去することで永久的に脱毛させる根本的な方法があります。

睫毛疾患は大きく3種類に分けられます。異常睫毛の生える場所や量、長さによって重症度は様々です。

睫毛疾患は大きく3種類に分けられます。異常睫毛の生える場所や量、長さによって重症度は様々です。

 

また、植物、砂、埃などが異物として目に混入した場合にも涙が分泌されます。この場合には、鼻涙管の洗浄を繰り返すことや、感染を起こしていることを考慮して抗菌薬やステロイドによる治療を行います。また、これらの異物は目を傷つけてしまう可能性があるので、フルオレセイン染色液を用いて目に傷がないかを検査します。

フルオレセイン染色液を用いて見た眼球です。傷ついている箇所は緑色に見えます。(矢印)

 

目に傷があった場合、その重症度に応じて点眼薬や内服薬による治療が必要となる場合があります。より重度の場合にはコンタクトレンズや外科的な治療を行います。

さらに、みなさんご存じの「ドライアイ」(乾性角結膜炎といいます)によっても、目の乾燥が刺激となり涙が出ることがあります。

ドライアイがひどくなると角膜や結膜に炎症を起こすだけでなく、角膜潰瘍を伴うことや、失明の危険性もあるので早めの治療が必要です。

ドライアイについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

角膜炎や結膜炎といった目の炎症の原因は様々で、感染症が隠れている場合もあります。この場合には感染症の治療を行いながら目を保護する目薬や適切な抗菌薬を使い治療していく必要があります。

 

涙の成分と涙焼けの関係

このように、様々な原因で涙が出続けると、涙焼け(目の下の毛が茶色く変色すること)を起こしてしまう場合があります。なぜこのように毛色が変わってしまうのでしょうか。

涙の成分の中には「ポルフィリン」という物質が含まれています。

これは不要になった古い赤血球が壊されたときに作られます。涙のほかにも尿や唾液などにも含まれています。

このポルフィリンは紫外線に当たると茶色く変色する性質をもちます。

ですので、毛に付着した涙を長時間放置すると毛が茶色く変色してしまうのです。

涙焼けは、白色など薄い毛色だと余計に目立ってしまうこともあり、よくご相談を受ける症状の一つです。

涙焼けを解決するためにはまず、流涙の原因となる疾患の治療を行うことが最優先です。治療が難しい場合や普段のケアとして、長時間涙で毛が濡れたままにならないようこまめにコットンやガーゼで優しく拭き取ってあげるとよいでしょう。

カピカピに固まってしまっている場合には濡らしたコットンやガーゼを当てて一度ふやかしてから拭き取り、コームで優しく梳かしてあげましょう。

動物が嫌がってしまうときや固まって取りにくい場合には、かえって目や皮膚を傷つけてしまう可能性もありますので、無理に取ろうとせず病院スタッフにご相談ください。

 

最後に、涙は日常的によく目にするものではありますが、その異常は様々な病気のサインになっている可能性もあります。日々のケアを行っていただくと同時に、普段からよく様子を観察していただくことがとても重要です。ご不安な点はいつでも病院スタッフにお声がけください。