犬のリハビリテーションで使用する道具を紹介します!
シニア期になると足腰の痛みなどからお散歩などを嫌がるワンちゃんが多くなります。
しかし、「もう高齢だから」「歩かないから」と運動を控えると筋力が低下してしまい、さらに動けなくなるという悪循環に陥ってしまいます。
いくつになっても健康的にしっかりと立って歩けるようにサポートすることで寝たきりの予防になり、介護によるご家族の負担も小さくなります。
筋力維持のためには人と同じようにリハビリテーション(リハビリ)を行うことが重要です。
当院でリハビリを行う場合は獣医師による診察を受けていただいた上で、現在の状態を評価しどのようなリハビリが適しているか判断をしていきます。その後、しっかりとカウンセリングを行うことでワンちゃんの性格やご家族の生活スタイルに合ったリハビリをご提供いたします。
リハビリについてご紹介したいことはたくさんあるのですが、今回は当院で使用しているリハビリの道具をご紹介していきます!
リハビリ時に道具を使用する目的
リハビリの目的はワンちゃんやご家族が抱えるお悩みによって様々です。
リハビリと聞くとプールなどで運動することを想像されるかもしれませんが、積極的に身体を動かすだけではありません。
特別な道具を使わなくても、人の手を使ってマッサージや姿勢を補助することで行うリハビリもあります。一見地味に見えるかもしれませんが、立っている状態を維持することや不安定な足場でバランスを取ることもリハビリなのです。
当院ではそのような方法に加えて、道具を使用することでさらに負荷をかけてバリエーションに富んだリハビリを行えるように工夫しています。
リハビリをご提案するケース
具体的にどういった症状がでたらリハビリを行うべきなの?と疑問に感じる方も多いと思います。普段の生活を思い返したとき、下記のようなご様子はみられませんか?
・以前より散歩で歩かなくなる/散歩に行きたがらない
・段差や坂道を嫌がる
・動作がぎこちない
・立ち上がる動作がゆっくりになった
・ソファに跳び乗るのを躊躇するようになった
・積極的に遊ばなくなった
猫ちゃんでは、キャットタワーに登らなくなるなどのご様子がみられることがあります。
このようなご様子をすべて年齢のせいにするのは早いかもしれません。
生活をしていく上で痛みを感じていたり、活動に制限が出てきている場合には治療と併せてリハビリをオススメしております。
猫ちゃんはワンちゃんのように積極的にリハビリの道具を使うことは難しいのですが、許容してくれる範囲でマッサージなど簡単なリハビリをするだけでも衰えていくスピードを緩やかにしてあげられます。
また、このような症状がなくても予防的にリハビリを行うことで体力、筋力の維持に繋がります。
リハビリ道具の使用方法
それでは、当院で実際に使用している道具とその使用方法についてご説明していきます!
リハビリを開始する前に現在の筋肉量がどの程度なのか、前回と比べてどのくらいの変化があるのかを確認します。
数値化することで効果がわかりやすくモチベーションになりますが、シニアの場合は現状を維持するだけでもすばらしいことです。
・ゴニオメーター
関節の可動域を測定する道具です。可動域というのはどのくらい曲げ伸ばしができるのかというもので、ゴニオメーターという分度器のような器具で測定します。
シニア期になると関節がこわばったり、痛みによって十分に曲げ伸ばしができなくなってきます。関節を曲げずに突っ張ったような姿勢で歩いている様子を見て異変に気付くご家族もいらっしゃいます。
これをリハビリ時に測定することが機能回復の指標となります。
・メジャー
手足や胴回りの周囲長を測るために使用します。立っているときの姿勢や歩いている動作を写真、動画でも記録するのですが、メジャーで手足の付け根などの長さを測定することで筋肉の大きさを数値化して比較することができます。
計測する位置によって誤差がでてしまわないよう、きちんと統一するように心がけています。
・ばねばかり
周囲長を測る際スタッフによってメジャーを引っ張る力に差があってはいけません。毎回同じ力加減で測るためにばねばかりを使用します。
・保冷、保温
リハビリ前にはホットパックで身体を温めることにより、血行が良くなり筋肉の緊張を和らげ、痛みの緩和や組織の伸展性を改善するなどの効果があります。
電子レンジで温めるタイプのものを使用しており、ご家庭でも簡単に取り入れていただくことができます。
リハビリ後はアイスパックで冷やすことにより、クールダウンし筋肉を休ませます。
・ピーナッツ
ピーナッツ型のバランスボールです。真ん中がくぼんでいるため安定感があり前足を乗せてバランスを取ったり、小型犬であれば落下しないよう注意を払いながらこの上に乗せて足腰、体幹のトレーニングができます。
バランストレーニング、筋力アップ、関節可動域の改善などに使用可能で筋力に合わせて膨らませる際の空気の量を調節しています。
・バランスディスク
円盤状のバランスボールで、地面との接地面が少なく不安定な構造になっています。
空気圧を調節することにより揺れの大きさを調整できる為、筋肉量に合わせたリハビリが可能です。
大小のサイズを組み合わせたり、他のリハビリ器具と組み合わせたりと様々な使い方ができます。凸凹した表面の感触は足裏に刺激を与えることもできます。
この他にも院内にあるもので障害物を作ってそれを避ける、くぐる、跨ぐといった運動をすることもあります。
ご家庭にあるものでも簡単にアジリティのようなコースをつくることができますので、ご興味のある方はご相談ください。
使用する際に注意している点
リハビリの道具を使用する際に注意しているのは、「楽しく行うこと」「無理をさせないこと」です。大好きなおやつやおもちゃをご褒美にしてワンちゃん自身のやる気を引き出しています。
リハビリは継続しなければ期待通りの効果が出ません。「頑張ったらおいしいものもらえた!」という楽しい思い出を作って、また来たいと思ってもらえるような工夫をしています。
そして体力面や痛みなどに配慮し、その子にあったペースで休憩を取りながらリハビリを行います。また、スタッフが常に補助に入ることで怪我のないよう安全面に注意しています。
リハビリをすすめられたら?
実際にリハビリを勧められたら、分からないことだらけで不安に感じるかもしれませんがご安心ください!
ご不明な点がございましたらお気軽に担当獣医師やスタッフにご相談ください。
リハビリは院内で行うだけでなく、ご自宅でも続けていただいたり飼育環境を整えていただくなどご家族の協力が不可欠です。
大切なワンちゃんと楽しく生活していけるようにご家族の皆様とスタッフで一緒にチームとなってサポートしていきましょう!