犬や猫にブドウを与えてはいけない?!生活の中に潜んでいるブドウ中毒の恐怖
犬や猫のごはんを手作りしたり、市販のフードにトッピングとしてゆで野菜、おやつにフルーツをあげているご家族も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、人間にとっては美味しくて害がなくても、動物には有害である食べ物もあります。
今回はその中でも、甘くてジューシーな秋の味覚「ブドウ」の犬と猫への危険性をご説明していきます。
なぜ犬と猫にブドウを与えてはいけないのか?
ズバリ、ブドウ中毒になり死亡してしまう可能性があるからです。
犬と猫にブドウを与えてはいけないというのは、アメリカの研究者たちによって報告された2001年の論文がきっかけだと言われています。
その内容は、「ブドウかレーズンの、片方か両方を食べた犬43頭が、腎機能障害を発症し、約半数の犬が急性腎不全で死亡した」というものでした。日本国内においてもブドウやブドウの皮、レーズンなどを食べて急性腎障害を引き起こした症例報告が多くあります。
ブドウ中毒の原因
ブドウ中毒になる原因は、現在はっきりとはわかっていません。農薬、カビ、ブドウ由来の成分ではないかといわれています。
果実部位と皮のどちらがより毒性が強いのか、各個体の特異体質なのかも議論されていますが、2022年の報告では酒石酸カリウムの摂取による急性腎臓傷害が犬に発生することが示され、ブドウやレーズン中毒症との関連が指摘されています。特にタマリンドやブドウに含まれる酒石酸カリウムが犬にとって毒性の高い成分であるのではないかと考えられています。
一粒だけ、ごく少量でも症状がでる可能性があるため注意が必要です。
ブドウ中毒の症状と血液検査による異常値
ブドウ中毒になると、下記のような症状がみられます。
・嘔吐
・下痢
・震え
・呼吸が速くなる
このうち嘔吐は食べてから2~3時間以内に多くの症例で起こると言われています。
また、症状が進むと尿量の減少など腎障害による症状がみられるようになります。
血液の異常としては、腎機能の指標値であるBUN(尿素窒素)、Cre(クレアチニン)、Ca(カルシウム)、P(リン)が急激に上昇します。
ブドウ中毒の治療
体内にブドウの成分が吸収されないようにして急性腎障害に対しての治療で腎機能を維持し、体の外へ毒素を排泄させることが主な治療になります。
ブドウを食べた直後~1時間以内であれば、吐かせるための処置をします。大量のブドウを摂取した場合には胃の内部を洗浄することもあります。内服薬を投薬し、消化管内の毒素を吸着して体の外への排泄を促します。
これらの処置は食べてしまってからの時間経過や、食べた量、症状などによって判断されます。
腎臓障害が既におきているときには、点滴で腎障害による脱水、電解質バランスの補正をしたり、投薬によって炎症や吐き気、下痢などの症状を緩和させる治療を行います。
一度障害を受けてしまうと本来の腎臓のはたらきができなくなってしまうため、いち早く治療を開始する必要があります。腎臓のはたらきについて詳しくはこちらをご覧ください。
ブドウ中毒の予後
ブドウ中毒になってしまった場合、今後どうなるのでしょうか?
食べてしまってから治療までの時間が早ければ早いほど、回復を見込むことができます。体質や既往歴、摂取量、体格によって予後は変化しますが、早期に治療を開始すれば回復することが多いでしょう。しかしながら、症状が進行し続け重症になると死に至ることもあります。特に体の小さな子は危険だと考えられます。
ブドウ中毒の予防
まず、ブドウやレーズンを犬と猫に与えてはいけないということとその危険性をご家族が意識することが大事です。短時間でも目を離す際は犬猫の手の届かないところに保管するなど細心の注意が必要です。
もし、万が一ブドウやレーズンを食べてしまったら、できるだけすぐに動物病院を受診しましょう。