うちの犬がドライアイになったかも?そんな時はシルマーティアテストで涙の量を測ってみましょう

眼に関する検査といえば、皆さんはどんな検査を思い浮かべるでしょうか。

視力を測る視力検査や、網膜など眼の内部の状態を調べる眼底検査は多くの方が受けたことがあるかもしれません。

今回は涙の量を測る検査である「シルマーティアテスト」という検査について解説していきます。

 

涙はどこから出るの?

涙には、眼に潤いを与える水分としての役割の他に角膜への感染を防ぐ、眼に酸素や栄養を供給するなどたくさんの役割があります。

眼の健康状態を保つために必要不可欠な涙は、「涙腺」「第三眼瞼腺」という場所で産生されます。

そして角膜へ分泌された後に涙点から鼻涙管という管を通り、最終的に鼻の奥へ流れ出ます。眼の構造について詳しくはこちらをご覧ください。

 

正常な涙量と異常な涙量

様々な疾患によって、涙の量は増えたり減ったりすることがあります。

涙の量が多いと涙やけの原因となります。

逆に少ないと眼に十分な水分や栄養が行き渡らず、眼の乾きなどの違和感や感染を起こしやすくなる可能性があります。つまり、涙は多すぎても少なすぎてもいけないのです。

そこで、①~③の3枚の犬の眼の写真を用意しました。それぞれの涙の量は適切でしょうか。ぜひ、皆さんのご自宅の犬の眼のご様子と見比べてみてください。

 

検査の方法

先ほどの①~③の犬の涙の量を測るために、「シルマーティアテスト」という検査を実施します。

この検査はシルマー試験紙という専用の小さな細長い紙を下瞼と眼球の間に挟んだ状態で1分間待ちます。

すると、下の写真のように試験紙に涙が浸み込むことで色が付きます。1分後にこの色がついた部分の長さの目盛りを見て涙の量を評価します。

眼に触れるところに紙を入れて痛そう…と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、この紙は濾紙でできており、非常に柔らかいので多少の違和感を感じる可能性はありますが眼への強い刺激ではありませんのでご安心ください。

実際のシルマーティアテスト試験紙

とてもお利口に検査を受けてくれていました!

 

一般的に正常値は犬ではおよそ15~25mmとされています。10mmを下回ると明らかに涙の量が少なく、30mmを超えた場合はかなり多いと判断します。それではそれぞれの犬の眼の状態を考えていきたいと思います。

先ほどの①~③の犬のシルマーティアテストの結果がこちらです。

まず、①は6mmという結果です。これは正常値の範囲を外れており明らかに涙の量が少ないとわかります。

①の犬の眼を見ると、粘稠性が高く黄色っぽい目脂も出ています。このことから「乾性角結膜炎(ドライアイ)」である可能性が考えられます。ドライアイについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

次に、②は25mmという結果です。これは正常値10~25mmの中に含まれており、ひどい目脂や充血などの症状もないため異常のない健康な眼です。

 

最後に、③は35mmを超えています。この子の場合何らかの原因で涙の量が多く、シルマーティアテストの結果でも正常値を大きく上回っていました。

涙の量が多い疾患は様々ですが、実はその一つに①と同じ「乾性角結膜炎(ドライアイ)」も考えられます。これは、眼が乾燥した状態が刺激となり、涙が多く出てしまうためです。このように涙を流すこと(流涙)について詳しくはこちらの記事もご覧ください。

 

このように、シルマーティアテストは痛みなどのストレスが少なく涙の量を測ることができ、乾性角結膜炎(ドライアイ)を診断することに役立つ検査の一つです。

涙の量の変化は、注意しないとなかなか気づくことが難しい変化かもしれません。ですが、涙の量に異常がみられた時、実は眼の病気が隠れていることもあります。

日ごろからよく観察していただくと同時に、いつもと変わった様子やご不安なことがありましたらいつでも病院スタッフにお声がけください。

この記事を書いた人

渡部(獣医師)
幼少期から生き物や自然と関わることが好きで、昆虫や魚類、爬虫類と様々な生き物を飼育している。中でも10年間一緒に過ごした大型犬はもはや「妹」。獣医師として特に腫瘍の分野に力を入れたいと考え、日々勉強に励んでいる。甘党、ディズニー好きという女子っぽさもありつつ実は恐竜好き。