わが家の犬や猫が何度も吐いている!腸管を詰まらせてしまう腸閉塞とは
おうちの犬や猫が突然吐き戻した、お腹が痛そう、食欲がないといった症状が出ると心配になりますよね。
何か飲み込んでしまったときに「腸閉塞を起こす」ということはどこかで耳にしたことがあるかもしれません。しかし腸閉塞の原因は“ものを詰まらせる”だけではないのです。
そこで今回は腸閉塞について解説していきます。
腸閉塞とは
腸閉塞とは何らかの原因で腸管内がふさがれており、内容物が通過できなくなっている状態のことを言います。
腸管に対してどれほど閉塞しているかによって完全閉塞と不完全閉塞があります。完全閉塞では閉塞物によって完全に塞がれており下流の腸管へ内容物が流れていかない状態であり、不完全閉塞では閉塞物によって一部閉塞されているものの腸管内容物は下流に流れている状態になります。
原因
腸閉塞にもいくつかの原因があります。
上記の原因のうち異物摂取による腸閉塞での来院が一番多くみられます。異物として遭遇するものについてはこちらもご覧ください。
症状
よくみられる症状として頻回の嘔吐が挙げられます。その他に腹痛、食欲不振、腹部膨満などがみられ、不完全閉塞の場合下痢などもみられます。
閉塞を起こす様々な原因によって腸管壁の血流が遮られてしまうと腸管壁が壊死を起こします。そこから腸に穴が開くこと(腸穿孔)で腹膜炎などを引き起こします。これによって炎症が全身に広がり、致死的な状態になることがあります。
検査
腸管の閉塞を疑う場合、画像検査での診断が多く行われます。
レントゲン検査
腹部のレントゲン検査を行い、閉塞させる異物が写っていないかを確認します。しかしレントゲン検査では金属製のものや固いプラスチック製のおもちゃなどはわかることもありますが、ジャーキーなどのおやつ、布製のもの、ビニール、植物の種などは判別が難しいこともあるため注意が必要です。造影剤を使用した造影検査では内容物の流れを時間の経過とともに観察することができます。ある特定の場所で流れなくなる、流れが悪くなるとその部分での閉塞を疑っていきます。
エコー検査
腸管内容物の流れを観察するときに利用されます。異物が疑われるところより上流に内容物が貯留していた場合閉塞を疑います。
また、腸管の壁の構造をみて腫瘍性のしこりや腸重積などがないかも確認していきます。同時に、周囲の組織や腹腔内の状態を確認することで腹膜炎の可能性がないかも確認します。
その他の検査
腸閉塞が疑われる場合、その影響による身体全体の状態を把握するために血液検査を実施します。
また腫瘍性の閉塞が疑われる場合は開腹手術をして組織生検を実施し診断をしていきます。
治療
治療は原因毎に異なるためしっかりと診断した上で治療方針を決定します。
異物
異物による腸閉塞では内視鏡もしくは開腹手術にて腸管内の異物の除去を行うか、腸管が壊死している場合はその部位を切除して、健康な腸管同士を繋ぎ合わせます。
異物摂取が原因の場合には日頃から生活環境を整え、口に入れさせないよう工夫が必要です。
腸重積
外科手術によって整復もしくは切除を行います。同時に腸重積になった原因の治療も行います。
腫瘍性
組織生検の結果を踏まえ、腫瘍の種類によっては抗がん剤治療や腫瘍の部分を切除し腸管を縫合するような外科治療を行います。
絞扼性(こうやくせい)
絞扼性の腸閉塞では腸管が壊死している部分を切除し、絞扼の原因となった部分を整復します。
まとめ
腸閉塞では放置してしまうと全身の状態が悪化してしまい命の危険もあるため早期の治療が必要です。嘔吐や食欲不振が続く、何か食べてしまっているかもしれない可能性がある場合はすぐに病院を受診しましょう。
腸閉塞の予防としてできるのは誤食による閉塞です。日頃から誤食するようなものは置かないように生活環境を整え、散歩中の拾い食いに注意しましょう。