犬や猫でチューブからごはんをあげる方法 ~胃瘻チューブ編~
病気などが原因で食欲が落ちてしまうと、なんとか食べさせないといけないと不安になってしまいますよね。
また、食欲はあるのに口の中に腫瘍があるなどの理由で思うように食べられなかったり、飲み込むことが不自由になってしまうこともあります。
そんなときにチューブを通じてごはんをあげる方法がいくつかあります。
今回はその中で最も長い期間使用することができる胃瘻(いろう)チューブについて解説します。
胃瘻とは
まず、胃瘻とは身体の外と中をつなぐ穴を意味します。
この胃瘻に設置するチューブのことを胃瘻チューブ(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)といいます。
これによって身体の外から胃の中へ直接フードを入れてあげることができます。
チューブの内径は3mmで、食事のために身体に設置できる他のチューブよりも太いことが特徴です。これにより液状ではないフードも詰まりにくく、多くの量をスムーズに入れることができます。また、半年から1年程度と長期間使用できることもメリットのひとつです。
胃瘻チューブの設置は、下記の場合にご提案しています。
①病気などの理由から口からごはんを食べられない
②食欲が不十分で栄養を補う必要がある
③今後、①②のような状況が予想される
身体に穴を開けてチューブを設置するとなると、ご不安に思われる方がほとんどかと思います。しかし、思うように食べられない状況が長く続いたり、嫌がる犬猫に対して無理やり食べさせることはご家族と犬猫の双方にとって大きなストレスになってしまうことがあります。
生活の質を向上するためにも胃瘻チューブの設置は非常に有効的です。チューブを設置することによる生活上の制限はほとんどなく、獣医師の判断のもと散歩に行ったりシャンプーすることも可能です。
設置は全身麻酔をかけて基本的に内視鏡を使用します。場合によって開腹手術にて設置することもありますが、内視鏡では術後大きな傷口も残らず毛刈りの範囲も直径約5~7cm程度で済みます。処置時間は約20~30分程度と非常に短時間で終了しますので、身体への負担は最低限に抑えることができます。
食事方法
胃瘻チューブの設置後はチューブから液状~ペースト状の流動食を入れられるようになります。食欲があれば普段通り口からも食べること、飲むことも可能なので、好きなフードやおやつを食べる楽しみもなくなりません。
フードだけでなくお水、内服薬も入れられます。お薬を飲むことが苦手な場合にはその負担を軽減できます。
鼻に設置する細いチューブでは液状のフードでないとあげることができませんが、胃瘻チューブではペースト状のフードもあげられるため選択できるフードの種類の幅が広がります。
チューブを使用したお食事の方法について詳しくは資料をお渡ししてご案内しています。ご不明点がございましたら、お気兼ねなくご質問ください。
チューブの管理
チューブの破損や引き抜いてしまうことを防ぐため、設置後はチューブを収納するポケットのついた洋服を着せておく必要があります。
特に猫など普段洋服を着なれていない場合は違和感から嫌がってしまう可能性があります。
胃瘻チューブを設置することが決まったら事前におやつを食べながら短時間だけ洋服を着せる練習をしておくとよいでしょう。
当院やインターネット上で購入できる他、かわいらしいデザインのものを自作されるご家族もいらっしゃいます。
胃瘻の保護のためにカバーを付けてあげることもあります。ストッパー部分と皮膚の間に着けることで擦れを緩和し皮膚の炎症などトラブルを防止できます。
こちらの胃瘻カバーは当院に通院されているご家族のご協力のもと作成したものです。手先が器用で手芸がご趣味であることから、カバー作成を快く引き受けてくださいました。
当院で胃瘻チューブを設置された犬猫には、こちらのカバーをプレゼントしています。
チューブの交換時期になった場合、またチューブが不要になった場合の抜去には再び麻酔をかけての処置となりますが短時間で終了します。
病気の治療のためには、栄養を十分に摂ってもらうことが必要不可欠となります。食欲が落ちている際には口元に運んであげたり、強制給仕をしたりとご自宅で食べてもらう工夫をする必要があります。
そんな時に犬猫とご家族の生活の質を高めるひとつの方法として胃瘻チューブをご案内しております。ご興味がございましたらお気軽にご相談ください。