犬のトレーニング道具「クリッカー」 使い方をお教えいたします!

「クリッカートレーニング」この言葉をご存知でしょうか?

「クリッカー」とは手のひらほどの大きさで、親指で押せるサイズのボタンが付いている道具です。そのボタンを押すと「カチッ」と音が鳴ります。

犬が正しい行動や望ましい行動を行った時に音を鳴らし、犬にそれが正しい事だよと教える事が出来ます。行って欲しい行動をとったときに音を鳴らすことを繰り返すことで、その行動を増やしていくことができます。

今回はこの「クリッカー」の使い方、使うときのコツなどをお伝えしていきたいと思います。

 

クリック音とおやつの結びつきがとっても大事!

「パブロフの犬」をご存知ですか?

〈ベルを鳴らしただけでヨダレがでる〉条件反射の代名詞とも言われています。

ベルの音を聞かせてからご飯をあげることを何度も繰り返すことで〈ベルがなる=ご飯〉となり、ご飯が出ていなくてもベルが鳴るだけでヨダレが出てしまうというものです。

クリッカートレーニングはこの条件反射を利用することで、行ってほしい行動を促すことができます。また一緒にトレーニングを行うことで、信頼関係を築き楽しく積極的にトレーニングを行うことができます。

では、どのように練習をしたら良いか簡単に説明をしていきます。

①準備するもの

・クリッカー

・好きなオヤツやおもちゃ

※身体の大きさに合わせて用意し、オヤツはすぐに飲み込めるサイズにしましょう

オヤツのサイズ例:人の小指の爪の1/4程の大きさ(小型犬)

・トリーツポーチやフードボウル

※おやつをいれてすぐに与えられるようにしましょう

・落ち着ける環境

※人通りの多い場所や他の犬などがよく通る場所だと集中して行うことが出来ません

落ち着いてトレーニングが出来る環境を整えましょう

 

犬にとってご褒美が食べ物であったりおもちゃであったり様々だと思います。その子に合わせたご褒美を用意してください。

今回のトレーニング例ではわかりやすくするためご褒美を「オヤツ」に統一します。

②クリック音とご褒美

「カチッ」という音を鳴らしたら5秒以内におやつをあげます。

この「カチッ」という音はおやつを約束するものなので1回鳴らしたら必ず1個オヤツをあげてください。

音を鳴らしオヤツをあげていると、犬はこの音が鳴ると必ずオヤツがもらえると学びます。音だけを鳴らすのではなく、声に出して褒めたり声をかけたりして楽しい雰囲気を作ることも忘れずにやりましょう。上手な褒め方に関してはこちらを参照ください。

③トレーニング(オスワリ)

〈クリック音=オヤツ〉に結びついたら次のステップです。

今回はオスワリをお教えしたいと思います。

おやつを使いオスワリの形に誘導します。

オヤツはすぐに出してあげられるようにトリーツポーチまたはフードボウル等に入れておくようにしましょう。

オヤツを鼻の高さに持ち、鼻の位置から上方に動いて少し犬の後方にやることで後ろ足を落としやすい状態にします。

オスワリの姿勢になったところで、カチッと鳴らしご褒美をあげましょう。

この動きを理解するまで繰り返し、慣れてきたらオスワリの形を取った際に「オスワリ」と言ってクリッカーを使う直前に付け加えるようにします。

今度は犬から2~3歩離れて、オヤツの誘導を使わず「オスワリ」とだけ言い待ちます。犬は自分で考えてオスワリの形を取ります。

そしたらクリッカーを使いカチッとならしてオヤツをあげます。座る行動が正解だよということをクリッカーで伝えます。

クリッカーは行って欲しい行動をしたら1~5秒以内に鳴らすようにしてください。そうしないと犬はどんどん考えて次の違う行動を取ってしまい正解がなにかがわからなくなってしまいます。

クリッカートレーニングはタイミングが重要なので正解の行動を取ったらできればすぐにクリック、遅くとも5秒以内には押してオヤツをあげるようにしましょう。

 

注意点

クリッカートレーニングを行う際は必ず空腹時に行うようにしましょう。満腹だとご褒美への興味が薄れてしまい魅力的ではなくなってしまいます。

またトレーニングは短時間で楽しく行うようにしましょう!長時間やっても集中力が続かず犬も飽きてしまいます。

トレーニングは焦らずゆっくりと少しずつ継続して行うことが大切です。決して無理強いはせず楽しく行うことを心がけてください。

オヤツに乗ってこない子は何がご褒美になるのか考えてあげましょう。遊ぶ事が好きなら好きなおもちゃの中で1番好きなものでご褒美の代用にします。

例えばボール遊びが好きなのであれば、正しい行動をしたらクリック音をならし、ボール遊びをしてオヤツの代用にします。そしてトレーニングが終わったら道具は届かないところへ片付けます。常に遊べると特別感がなくなり飽きてしまいますので注意してください。

オヤツも一緒でトレーニングの時だけに食べられる特別なオヤツを用意してもいいかもしれません。

 

最後に

クリッカーは音が一定で犬にとってわかりやすく、動作の瞬間を的確に教えることができて望ましい行動を覚えさせるのには有効な道具ですが、もちろんデメリットもあります。

クリッカーのカチッと鳴らす音が苦手な子もいます。またタイミングがずれると何が正解かわからなくなってしまいますので、タイミングがとても難しいです。

そしてオヤツが必要になるので太らないように1食分を減らして摂取カロリーを調整したり、食にあまり興味がない子はご褒美を探すのが難しかったりもします。

ですが、クリッカートレーニングは犬自身で考えて行動を行うので知的好奇心の刺激や運動不足の解消にも繋がります。また家族と一緒にトレーニングを行うことで家族間でのコミュニケーションにも繋がり絆が深まります。

この機会に是非試してみてください!

この記事を書いた人

荻野 (獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。