犬や猫の歯はどうなっているの?正常な犬と猫の歯の構造について
犬や猫の歯は人と比べて前歯が小さかったり、奥歯が鋭かったりなど様々な形をしていますね。
今回は健康な犬と猫の歯の構造についてご紹介します。
犬と猫の歯の構造
歯の構造は歯肉から出ている部分を歯冠部、歯肉で隠れている部分を歯根部といいます。
歯冠部の外側はエナメル質で覆われ、このエナメル質は体を構成する組織の中で最も硬い組織です。エナメル質自体は半透明ですが、その下にある象牙質がやや黄色っぽい色をしているため、歯の色が真っ白ではなく黄みがかって見えます。
歯根部の外側はセメント質で覆われており、エナメル質よりも柔らかい組織です。顎の骨と歯を繋ぐ組織である歯根膜を繋ぎとめる役割を担っています。
エナメル質とセメント質の下には象牙質があり、象牙質はエナメル質よりは柔らかい組織です。
象牙質の下には歯髄があり、歯髄には神経や血管が通っています。刺激を脳に伝達したり、歯に必要な栄養や酸素を運んでいます。
人では象牙質まで虫歯が進行するとお菓子やアイスなどの甘いものや冷たいもので歯がしみるようになります。
さらに歯髄にある神経は温度感覚がなく、熱いや冷たい等の刺激がすべて痛みとして感じるため、虫歯が歯髄まで進行すると熱いものや冷たいものを食べると歯がズキズキ痛みます。
歯の役割
歯は全部で3つに分けることができ「切歯」「犬歯」「臼歯」に分類されます。3つに分類された歯にはそれぞれの役割があります。
切歯は通称「前歯」と呼ばれる歯であり、歯列の中で一番手前にある歯です。上下の歯をはさみのように嚙み合わせて食べ物を切る役割を担っています。
人の場合は発音にも関連しており、切歯に隙間ができるとそこから空気が漏れてうまく発音しづらくなります。
犬歯は切歯の隣にある鋭利な歯で、食べ物を切り裂く役割があります。また、他の歯に比べて歯肉に埋まっている歯根部が最も長いため、強度がある歯です。
臼歯は通称「奥歯」と呼ばれる歯であり、前臼歯と後臼歯に分けられます。切歯や犬歯で食べやすい大きさになった食べものをすり潰し食べ物を消化しやすくする役割があり、犬や猫では歯ブラシが届きにくいため歯石が付きやすい歯でもあります。
犬と猫の歯の数
犬と猫で歯の本数は違い、犬は永久歯が42本、猫は永久歯が30本あります。
また、人と同じように乳歯、永久歯でも歯の本数は異なります。
犬と猫の歯の本数は表の通りです。
赤…切歯 緑…犬歯 オレンジ…前臼歯 青…後臼歯
歯が生える時期 永久歯に生え変わる時期
犬や猫の歯も人と同様に乳歯から永久歯へ変わります。
犬猫は2~3週齢で乳歯が生えはじめ、犬はおおよそ4~12週齢、猫はおおよそ6週齢前後で乳歯が生え揃います。3ヵ月齢頃から徐々に永久歯が生えはじめ、犬では5~7ヵ月齢、猫では4~5ヵ月齢で永久歯が生え揃います。
犬猫ともに永久歯が生え揃う6ヵ月齢前後はちょうど避妊手術、去勢手術の適正年齢です。
この頃に乳歯が残っている(乳歯遺残)犬猫は手術の時に一緒に乳歯を抜くこともあります。乳歯遺残について詳しくはこちらをご覧ください。
歯垢、歯石について
「犬猫は虫歯にならないのですか?」とご家族からご質問をいただくことがあります。
実は犬猫は人と口腔環境が異なるため、虫歯になりづらいのが特徴です。
人の唾液は弱酸性〜中性のため口腔内で糖分を栄養として虫歯菌が増殖しやすい環境ですが、犬猫の唾液はアルカリ性のため虫歯菌が増えにくいです。しかし、唾液がアルカリ性であるため歯垢が石灰化しやすく、歯石が付きやすい口腔環境です。
歯垢や歯石をそのままにしていると、歯周病菌がたまり、歯周辺組織である歯肉やセメント質、歯根膜などが歯周病菌の毒素により炎症を起こし、歯周病となります。
2歳以上の犬猫の80%以上は歯周病の徴候を認められていると言われており、とても身近な病気なのです。
歯周病にかかると口臭が目立つようになるため、ご自宅の犬猫の口臭をかいでみて、臭いがキツイと感じたら歯周病の可能性があります。
もしかして自分の子も歯周病かなと思った方は是非こちらをご覧ください。
健康な歯を保つには
犬や猫がなりやすい歯周病はどうすれば対策できるのでしょうか?
ずばり一番の対策方法は歯みがきをすることです!
歯垢から歯石に変わる前に歯みがきをして歯垢を落とすことがとても重要になります。歯垢の段階で歯みがきをすれば落とすことは可能ですが、歯石になってしまった場合は歯みがきをしてもなかなか落とすことはできません。
また歯石にはたくさんの小さい穴があり、そこに歯垢が溜まりやすいためさらに歯石が付きやすくなるという悪循環になってしまいます。
人では歯垢から歯石に変わるまでに14~28日間かかりますが、犬では3~5日間、猫では4~7日間で変わります。
早期に歯石になりやすい犬猫の為にも歯みがきがとても重要なのです!
歯みがきをすることで歯石は付きづらくなりますが、人も磨き残しがあるように、犬猫も歯みがきをしていても隅から隅まで磨くことが難しい場合があります。
そのため、年に1回全身麻酔をした状態で歯石除去をすることも取り入れるとよいでしょう。
全身麻酔と聞くと動物への体の負担が心配なご家族もいると思いますが、当院では麻酔をかける前に血液検査等を実施し全身的に評価してから処置を行います。また、処置中は麻酔管理者を必ず配置し、適切なモニタリングの中麻酔管理を行います。
歯石除去について気になる方は気兼ねなくご相談ください。
ただし、歯石除去をしても歯垢は付き続けるので、デンタルグッズなどを上手に使って健康な歯を保ちましょう。
当院では様々なフレーバーの歯磨きペーストやガム、毛先の形が異なる歯ブラシなどデンタルグッズを用意しております。当院でご用意しているデンタルグッズについてはこちらを参考にしてみてください。
当院では健康な歯を保つために様々な取り組みを行っています!昨年は歯科キャンペーンを実施しました。
歯科キャンペーンでは期間中に診察に来た犬猫の歯のチェックを行い、 どこに歯石がついているのか、磨き残しやすいところはどこなのかお伝えし、歯みがきチェックシートをお渡ししました。
多くのご家族からご好評いただき、キャンペーンをきっかけに歯みがきを実施する方も増えました。定期的に歯みがき教室も開催しております。
上記の歯科キャンペーンやはみがき教室以外でも、動物看護師に歯みがきに関してご相談いただければいつでもお応えいたしますので、お気軽にお声掛けください!!
そろそろ自宅にいる犬や猫の歯の状態が気になってきたころでしょうか。
この記事をきっかけに歯みがきをはじめてみようかなと思ってくれる方がいたらとても嬉しいです!
是非、一緒に動物の健康な歯を目指しましょう!