脈が「速いとき」と「遅いとき」に考えられる病気とは!?
規則正しくはたらき脈を打つ心臓ですが、何らかの原因で脈が速くなったり、遅くなったりすることがあります。
今回は脈のスピードについて解説します。
まずは心臓の仕組みについてお話します。
心臓は電気信号により収縮、拡張します。心臓には洞結節というペースメーカーの役割を果たしている器官があり、そこから周期的に電気信号が送られて心臓が動きます。
正しく電気信号が伝わり規則的に脈をうつ状態を「正常洞調律」といいます。
反対に、不整脈は通常の電気信号の流れに異常が生じた結果として発生し、リズムが規則的ではない状態を指します。
不整脈について詳しくはこちらをご覧ください。
脈が速いとき(頻脈)ってどういう状態なの?
1分間に打つ脈の数が、犬は160拍以上、猫は240拍以上で頻脈といいます。
頻脈性の不整脈は、洞性頻脈・上室性頻拍・心室性頻拍の3つに分けられます。
・洞性頻脈・・・正常の脈が速くなった状態
発熱・興奮など心臓以外の体の調子が現れたものがほとんどであり、元気な犬猫でも見られます。
・上室性頻拍・・異常な電気信号が上室(心房)で発生するためにおこるもの
病気のない犬猫でも、興奮やストレスなどによっておこること場合があります。
失神やふらつき、突然死を起こすリスクがあります。
・心室頻拍・・異常な電気信号が心室内で発生するために起こるもの
3拍以上の期外収縮が発生したものを心室頻拍といいます。(*期外収縮とは・・正常な脈の間に時々早い脈が入り込むこと)
心室頻脈が起こると、血液をおくりだす心臓のポンプ機能が低下し、脳に送られる血液が少なくなりめまい、ふらつき、失神、運動不耐性、突然死などを起こすリスクがあります。
頻脈の原因として
・心筋症
・心不全
・心臓腫瘍
・甲状腺機能亢進症
・胃拡張捻転症候群
・膵炎
・貧血
・尿毒症
・自己免疫疾患
・外傷
などがあげられます。
脈が遅いとき(徐脈)ってどういう状態なの?
1分間に打つ脈の数が、犬は70拍未満、猫は120拍未満で徐脈といいます。
徐脈性の不整脈には洞性徐脈、洞停止、ブロックに分けられます。
・洞性徐脈・・・正常の脈が遅くなった状態
一時的なものや特に体に支障をきたすことがないようなことが多いため、治療の必要がないことがほとんどです。
・洞停止・・・洞結節からの電気信号が一時的または持続的に停止したために起こる状態
・ブロック・・・心臓の刺激電動系を電気信号が流れる際に、その信号に遅れが起こる状態
洞停止・ブロックともに症状が進行すると、めまいや失神、突然死などにつながる恐れがありペースメーカーによる治療が必要になることがあります。
徐脈の原因として
・低体温
・甲状腺機能低下症
・競技犬(持久力を必要とするソリ犬やレース犬)
・洞結節の機能不全
・迷走神経の緊張
・心筋症
・感染性心内膜炎
・薬剤の副作用
などがあげられます。
好発犬種は
ミニチュア・シュナウザー
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
ダックスフンド
アメリカン・コッカー・スパニエル
などの犬種 中・高齢犬に多い病気です。
好発猫種はありません。
診断と治療
ふらつき、めまい、運動不耐性(散歩に行きたがらない 疲れやすい)、失神などの症状がみられた場合には早めに動物病院で受診されることをお勧めいたします。
聴診・レントゲン・心電図検査・心臓の超音波検査などの検査が必要になる場合があります。
当院では日本獣医循環器学会認定医による診察を行っており、より精密な検査をご提供しております。
例えば失神やふらつきがある動物に対して、原因を特定するためにホルター心電図による検査を行うことがあります。
ホルター心電図を付けて日常生活を過ごし、ご家族に動物の行動記録とっていただきます。
失神やふらつきが起こったときの心電図のデータと行動記録を照らし合わせ解析し、その原因を調べ、治療の決定・評価なども行うことができます。
胸に電極をつけ、外れてしまわないようにテープで補強した上でお洋服を着て過ごしていただきます。
検査の結果、原因によって治療方法は異なりますが、投薬など症状に合わせた治療が必要となります。
場合によってはペースメーカーや外科手術が必要となったり、緊急で処置などが必要になる場合があります。
心臓の病気は突然死に繋がってしまうこともありますので、日ごろから動物の様子をよく観察するようにしましょう。
ご自宅で体温や心拍数、呼吸数を測定していただきの正常値を知ることができれば、異変があったときに気づきやすくなりますので是非測定してみてください。ご自宅での測定方法はこちらで解説しています。
体調についてご心配なことがございましたら、スタッフへお気軽にお問合せください!