うちの犬や猫が咳をしている!咳をする原因や診断、対処法について解説します!

人と同じく、犬や猫も咳をすることがあります。生理現象として一過性に起こることもありますが、なかなか咳が止まらなかったり、急に激しい咳が出始めた時は何らかの病気になっている可能性があります。

今回は咳をする原因、咳を引き起こす病気、対処法などについて解説します。

 

咳とは

咳は気道に存在するセンサー(咳受容体)が刺激されて起こる反射であり、気道内に貯まった分泌物や異物を体の外に出そうとする防御反応です。一般的に猫の咳は犬に比べて遭遇する機会は多くはありません。

 

咳のメカニズム

咳は気管・気管支、咽頭、喉頭などに存在する咳受容体が刺激されると神経を介して脳の延髄にある咳中枢に情報が伝達され、神経を介して横隔膜、肋間筋などといった呼吸を行う筋肉が動くことで起こります。

動物で咳の原因となる刺激には①機械的刺激、②化学的刺激、③炎症性刺激、④温度刺激があります。

他に生理的現象の一つとして「逆くしゃみ」がありますが、こちらは鼻から空気を連続的に激しく吸い込むことによって起こります。咳と区別するポイントは息を吸った時なのか吐いた時なのか、口を開けているか閉じているのか、といった2つです。

咳は息を吐き出すのに対して逆くしゃみは息を吸いこむため吸気時に起こります。また多くの場合、咳をする際は口を開けますが逆くしゃみでは口を閉じています。詳しくはコチラも合わせてご参照ください。

 

咳の種類

咳は乾性と湿性の2つに分類されます。

乾性の咳

気道内にほとんど分泌物がなく「コホコホ」といった高く響くようなからっとした咳です。

湿性の咳

気道内に多くの分泌物があり痰が絡んだような咳です。このタイプでは連続する咳の後に吐くような動作を伴うことが多いです。「ぜえぜえ」と苦しそうな息づかいもみられます。

 

猫の咳は一般にわかりにくく、典型的な症状は頭やあごを前に伸ばして軽く舌を出しているように見えます。犬のように大きな音を出さず、小さく「ヒッー」というような音がする程度で原因によりますが咳の症状とともに呼吸困難やチアノーゼ、喘鳴、くしゃみ、鼻汁などがみられます。

 

咳の原因

上の表のように咳という症状からいろんな疾患が原因として挙げられます。原因によっては他の症状として呼吸が荒い、苦しそう、チアノーゼ(舌の色が青紫色に変化)、失神などが見られることもあります。

呼吸が苦しそうな様子の時には舌の色を確認しましょう。普段の色と違う、紫色をしている時はすぐに病院へご連絡ください。

 

診断方法

経過

①急な発症か、慢性経過か:症状の持続期間も鑑別の大事な手がかりになります。

②年齢、発現のタイミング:若齢なのか高齢なのかによって起こりやすい疾患が変わります。また季節性や環境で変化する場合はアレルゲンの関与が考えられます。興奮時や運動時の咳なのか、夜間や起床時、興奮時、運動後などのタイミングも鑑別に重要です。

③痰の有無:痰がある場合、ねばっとしているのか、泡状なのかなどの性質も鑑別の手助けになります。

身体検査

視診にて呼吸数や呼吸様式の変化、チアノーゼなどの粘膜の変化がないかを確認します。聴診では異常な呼吸音がないか確認します。触診では頚部の気管を軽く圧迫し咳が誘発されるかを確認するカフテストを行ったり、胸骨の変形がないかを確認します。

画像検査

胸部X線検査は咳症状を示す動物には重要な検査になり、気管支および肺、胸腔内の評価を行います。さらにX線CT検査や内視鏡を用いての喉頭や気管・気管支内の気管支鏡検査を行うこともあります。超音波検査も最近では呼吸器疾患に対して使用される場面が多くなり、X線検査と合わせて判断することで診断精度が上がると言われています。

赤丸部分が頸部気管での気管虚脱

血液検査

一般検査に加えてCRP(犬)やSAA(猫)といった急性炎症の検査を行ったり、フィラリア予防をしていない犬の場合、フィラリア症の検査を行うことがあります。

 

培養・感受性検査、細胞診検査

感染性疾患による咳が疑われる場合には培養や感受性検査あるいは細胞診検査が必要となります。気管や気管支、肺の洗浄液から細胞をみたり、培養検査を行います。

 

治療法

原因疾患によりますが感染が疑われる場合は抗生剤を、その他気管支拡張剤、抗炎症薬、咳症状が強い場合鎮咳薬なども使用します。また人の医療領域で使用されることが多い吸入療法(ネブライザー療法)を犬や猫の治療に使うこともあります。詳しくはコチラも合わせてご参照ください。

またご自宅では症状が出ている間はあまり興奮させないように安静に過ごしてください。

生理的な咳に対してはそれぞれの原因に対して対策することで改善が見られる場合があります。

リードを使用することで症状が出るならハーネスタイプに変更する。給水ボトルでの飲水で起こるのなら容器をお皿に変更もしくは給水ボトルの高さを変更する。ごはんを勢いよく食べることで起こるなら早食い防止用のお皿でごはんを与えるなどの変更を行ってみます。

 

軽度ですぐ治まる生理的なものであれば良いのですが、咳が続く、苦しそうな様子やチアノーゼなどが見られるときはすぐに受診してください。また子犬・猫や高齢犬・猫では重症化する可能性もあります。

受診の際は可能でしたらご自宅での咳の様子を動画に収めておくと診断の助けになることもあります。

この記事を書いた人

小安(獣医師)
ご家族様が相談しやすい診療を心がけ、診察受けてよかったと思えるような獣医療を提供できるよう日々邁進中。趣味は美術館、博物館に行くことで非日常感が味わえる独特な空間が好き。実家では猫を飼っていて帰省するたび猫を吸っては猫アレルギーを発症させている。