自宅で行う点滴治療 皮下点滴を紹介します
皮下点滴とは?静脈点滴との違いは何?
皮下点滴とは、皮膚と筋肉の間に輸液剤を入れる方法です。犬や猫は人間よりも皮下に空間があるために可能な方法になります。
静脈点滴とは、静脈に点滴の針を刺し、そこから輸液剤を投与する方法になります。急速に投与することができないため、必要量を投与するには長時間かかり入院が必要になります。
点滴のチューブが繋がっている為長時間お預かりしなければいけないということとお預かりによるストレスやチューブなどの誤食のリスクがあります。もちろん症状が重篤の場合には静脈点滴が必要になりますが、皮下点滴の方が処置の時間も短時間で済み、電解質や水分を補給できます。さらにご自宅で処置が可能な場合には来院によるストレスの軽減にもつながります。
皮下点滴の目的は?
軽度の脱水を起こしたときに、水分や電解質などを補給することです。処置時間が短時間で済み、練習をおこなえば自宅でも処置が可能です。
自宅で行う事で、来院せずに処置ができるため、ご家族だけでなく動物のストレスや体力的にも負担が少なくなります。
皮下点滴が必要な症状とは?
下痢や嘔吐などで軽度の脱水を起こしている場合に有効です。
また慢性腎臓病での皮下点滴は脱水を改善させて毒素の排泄を促す効果があります。
皮下点滴の方法
準備するもの
輸液剤 注射器 18G針 21G翼状針
1.輸液剤を人肌程度に温めます
電子レンジで10~15秒くらい 熱くなりすぎないように注意してください
2.18G針と注射器を接続します
接続部位は触らないように衛生的に行いましょう
3.輸液剤のシールをはがし、ゴムの部分にまっすぐに針を刺す
ゴムの部分であればどこでも大丈夫です
4.空気が入らないように必要量を吸引してください
入ってしまった場合には、注射器をたてたまま指でたたき空気を注射器の接続部位まで移動させ、注射器を押して輸液剤に空気を押し戻します
S字フックなどを用いて引っ掛けて行うと吸引しやすいです
5.18G針と21G翼状針を付け替えます
この時も接続部位は触らないようにしましょう
6.注射器を少し押し翼状針の管の中を液体で満たします
7皮膚をつまみます
肩甲骨の間(両前足の肩と肩の間)の皮膚が伸びやすくつまみやすいです
8.翼状針を持ち三角形のくぼみの中心に斜め45度くらいの角度で針を刺します
針の根元までしっかりと入れてください
翼状針と注射器を片手で一緒に持つと行いやすいです
9.注射器を引き、空気が戻ってこないことを確認し、挿入部分を抑えながら注射器を押し、皮下に点滴してください
この時空気が戻ってきたり、輸液剤が漏れてきたり、注射器を押してもなかなか輸液剤が入っていかないときは、翼状針がしっかりと皮下に入っていない可能性があるので刺しなおしてください
また翼状針が抜けてきてしまう場合がありますので、翼状針を軽くおさえながら行いましょう
10.全量点滴し終わったら、翼状針の挿入部位と皮膚をおさえながら翼状針を抜きます
11.しばらく翼状針を抜いた場所をおさえて、輸液剤が漏れてきて来ていないか、出血がないか確認し、終了です
漏れてきている場合や出血がある場合にはコットンなどで長めにおさえていただくと止まります
注意!!
点滴した部分はラクダのこぶのようにぷっくりと盛り上がりますが、時間とともに体に吸収されていきます。
重力により盛り上がっていた部分がお腹のほうに下がってきたり、前肢や後肢に下がってくることがあり、手足が腫れているように見えることがありますが問題はありません。
ただ歩きにくくなってしまうことがあるので、前肢の上部や後肢の上部に点滴を行う事は避けるようにしましょう。
脱水が重度の場合は、皮膚がつまみにくく輸液剤が漏れてしまうことが多くあります。その場合には、皮膚をつまんで三角形を作ったときに、くぼみの中心ではなくやや下の皮膚に翼状針を刺しましょう。
難しい場合には病院スタッフへお知らせください!コツをお教えします。
また、次の皮下点滴を行う際にまだ輸液剤が残っている場合には、吸収が追い付いていない場合があります。そのようなことが見られましたら病院へご連絡ください。
皮下補液セットの分別方法
注射器や針の入っていた袋、空の輸液剤は家庭ごみで捨てることができますが、注射器、18G針、21G翼状針は医療ごみになります。
注射器は市町村によって家庭ごみで捨てることができるところもありますが原則医療ごみとして病院までお持ちください。
特に針はケガをする恐れがあるので、キャップをしてペットボトルや瓶などに入れてお持ちください。
まとめ
自宅で皮下補液ができるということはペットや飼い主様の負担を減らすことにもなりますが自宅だとペットが暴れてしまう、私が針を刺すのはちょっと、、、なんてことがあるかと思います。
自宅で皮下補液を始める際は、病院でペットのおさえ方や針の扱い方をふくめ、コツなどもしっかりとお教えいたしますのでご安心ください。
もちろん通院治療も可能です。
わからないこと、心配ごとがあれば何度でもご相談ください。