最近犬や猫のおしっこ増えたかも…それって病気のサインかも?
多飲多尿、という言葉を聞いたことはありますか?
ご自宅でのご様子を思い出してみてください。以下の症状に当てはまるものはありませんか?
・いつもより水を飲んでいる時間が長くなった
・用意した水がすぐになくなる
・排尿時間が長くなった
・失禁してしまう
・尿の色が薄くなってきた
・尿をした後のトイレ砂の塊が大きくなった
・ペットシーツを取り替える頻度が増えた
など、ご自宅の犬猫に見られることはありませんか?
「水をよく飲んでいるから尿がたくさん出るのは、当たり前じゃないの?」と思うご家族の方もいると思います。しかし性格や好みではなく、病気の可能性があります。
病気の影響で尿の濃縮がうまくできなくなり、薄い尿がたくさん出ることで脱水が起きます。このため喉が渇いてしまうので、たくさん水を飲んでいるのです。
具体的には1日の飲水量が「犬:1㎏あたり100 ml以上 猫:1㎏あたり50ml以上」の場合、病的な多飲であると言えます。
多飲多尿になってしまう原因は?
具体的にはどのような病気で多飲多尿になってしまうのでしょうか?
主な病気として、
➀糖尿病
②クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
③慢性腎臓病
④子宮蓄膿症
⑤甲状腺機能亢進症
⑥アジソン病(副腎皮質機能低下症)
⑦心因性多渇
⑧尿崩症
が挙げられます。こちらについて簡単に紹介いたしますが、一部の病気では詳しい記事もリンク先にありますので合わせて読んでみてください。
➀糖尿病
血糖値を下げる働きを持つインスリンが効かなくなったり、分泌量が減ることで発症して血糖値が高くなる病状です。
主な症状としては、多飲多尿やご飯を食べていても痩せていくなどがあります。尿中への糖の排泄が増えるため尿の量が増えます。
②クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
犬での発症が多く、副腎から分泌されるホルモンであるコルチゾールが増加する病気です。
主な症状としては、多飲多尿やお腹周りが膨らんだり、皮膚が薄くなることもあります。
「ウチの子、年を取ってきたから…」と思われやすい症状なので、注意が必要です。
クッシング症候群については詳しくはコチラをご覧ください。
③慢性腎臓病
腎臓の機能が低下することで体内の老廃物を尿から排出できなくなっていく状態が徐々に進行する病気です。
主な症状として多飲多尿や脱水、貧血、嘔吐などを起こします。腎臓の機能である尿の濃縮の機能が低下することで尿量が増えます。
脱水を補うために、皮下点滴を行うことが多いです。
慢性腎臓病については詳しくはコチラをご覧ください。
④子宮蓄膿症
中高齢の未避妊の犬猫に見られます。
子宮の中に細菌が感染して膿が溜まり、細菌の毒素によって全身状態が悪化する病気です。
主な症状としては多飲多尿や陰部から膿が出たり、元気食欲低下、腹囲膨満などが見られます。発見時の状況により早急な治療が必要な場合があります。
細菌の毒素がバソプレシンという抗利尿ホルモンの働きを妨げるため尿の量が増加します。
⑤甲状腺機能亢進症
甲状腺の腫瘍化や過形成によって甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気です。
高齢の猫での発症が多く、主な症状として多飲多尿や食欲はあるのに体重が減少する、以前よりも元気があるなどが見られます。
甲状腺機能亢進症について詳しくはコチラをご覧ください。
⑥アジソン病(副腎皮質機能低下症)
ストレスや自己免疫などが原因で、副腎が萎縮することで副腎から分泌されるコルチゾールなどのホルモンが低下する病気です。
特徴的な症状が少なく下痢や嘔吐が見られたり、食欲や元気がなくなる、多飲多尿などが見れます。
⑦心因性多渇
血液検査や尿検査での異常や他の疾患が認められない場合には、運動不足や極度の緊張状態(近所の騒音・お留守番の時間が長くなった)などの要因や、トイレトレーニングの際におやつが貰えることを学習して多尿になることなどがあります。
この状態を心因性多渇と言います。多飲多尿の他に症状はなく、検査でも異常が見られません。環境が変わった際には、犬猫の様子をよく見てあげてください。
⑧尿崩症
脳下垂体から分泌される、尿を濃縮する働きを持つホルモンのバソプレシンが、脳の腫瘍や損傷・先天性な原因によって減少することにより、尿を濃縮することができなくなる病気です。
主な症状としてかなり薄いおしっこをたくさんし、十分に水を飲まないことで脱水になってしまうこともあります。
血液検査や尿検査、エコー検査やレントゲン検査などを行い、他の病気に該当しない場合に尿崩症と診断するために「水制限試験」を行います。ただし、検査を行う際には犬猫に負担がかかるため注意が必要です。
これらの他にも尿路系の療法食や、薬の副作用などで飲水量が増えている場合もあります。
少しでも疑問点やご不安なことがある場合にはご相談ください。
多飲多尿認められた場合に重要な尿検査はどんな検査?
疑われる病気に関係する臓器の数値を調べる血液検査に加えて、上記どの病気でも尿検査を行います。中でも「尿比重」が重要です。が必要に応じてレントゲン検査や超音波洗浄も行います。
尿検査は院内やご自宅で採取した尿で検査を行います。
尿を濃縮する機能が落ちている時に重要なのが、「どのくらい濃縮できているか」を計測する『尿比重』です。屈折計を使用して行う検査です。
基準値は犬と猫で異なり、「犬:1.030未満 猫:1.035未満」の場合、異常値となります。
当院では、基本的に院内で採尿を実施しておりますが、ご自宅での尿の採取をご希望の際には、採尿のためのセットをお渡しますのでスタッフにお声掛けください。
なるべく新鮮な尿を採取していただき、ご持参ください。
尿比重が基準値よりも低かった場合、再検査になることがございます。その場合には朝一番にした尿での検査が理想です。日中と比べて飲水や運動による影響が少なく、寝ている間に尿が濃縮されるためです。
自宅でいち早く多飲多尿に気づくためのポイントとは?
まずはご自宅での犬猫の飲水量を量ってみましょう。
【計測方法】
①器や給水ボトルに水を入れる際に、計量カップやペットボトルなどで量ってから入れます。
水が切れないようにこまめに補充するか、大きい器を使用し加えて入れた水の量もメモしておきましょう。
②24時間後に残った水の量を量って、1日の飲水量を計算してみましょう。
1日のみではなく、数日間連続で量りましょう。
次に尿量を量ってみましょう。
飲水量とは違い24時間の量を計量することは難しいですが、ペットシーツに排尿してもらい重さを量ることでおおよその量がわかります。
もしくは、シーツの排尿後のシミの大きさやトイレ砂の塊の大きさを把握しておきましょう。
複数の猫がいる場合には1頭、1頭の尿量を把握することは難しいと思います。最近ではトイレに顔認証システムが搭載され、猫1匹1匹の体重や尿量などを計測してくれる高機能なトイレもあります。
いつもの量がわかることで、わずかな変化にも気が付きやすくなると思います。
最後になりますが、犬・猫の飲水量、尿量が少しずつ増えているといった変化には、気が付きにくいかもしれません。少しでも「いつもと違うかも」と思った時、些細なことでも構いませんので、気になることや不安なことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。