赤いおしっこが出たらどうしよう?~犬や猫の血尿と血色素(けっしきそ)尿(にょう)~
いつもとおしっこの色が違うときや、茶色や赤いおしっこが出た場合は血尿かな?と思われる方も多いかと思われますが、そのすべてが血尿というわけではありません。
血尿以外にも血色素尿という赤い色の尿が出る時があります。
血尿と血色素尿の違いはなに?
「赤い色の尿」という共通点をもつ血尿と血色素尿ですが、その赤い色素の由来が何の物質なのかによって区別されます。今回はそれぞれの原因と考えられる病気についてご紹介していきます。
血尿はイメージが付きやすいと思います。簡単に言うと尿に赤血球が混ざっている状態です。その名の通り赤血球は赤いので尿が赤く見えます。
では、血色素尿とは何でしょうか。血色素尿とは尿に赤血球の色素が混ざっている状態のことをいいます。
何らかの原因で赤血球が大量に壊され、肝臓や脾臓で処理しきれない状態になると赤血球中の赤い色素(ヘモグロビン)が尿中に出てきてしまうのです。
赤い色のもとが赤血球そのものなのか、色素だけなのかがこの2つの大きな違いです。
血色素尿の原因は・・・?
犬・猫の血色素尿は中毒や感染症(寄生虫・細菌)、病気などが原因として考えられます。
中毒で多い物はネギ中毒(玉ねぎなどのネギ類を誤食して起きる中毒)や人間の風邪薬を誤食してしまった際のアセトアミノフェン中毒などがあります。
誤食についてはこちらを参考にしてください。
血色素尿が出る病気の代表的なものとして、免疫介在性溶血性(Immune-mediated hemolytic anemia : IMHA)が挙げられます。
原因ははっきりと判明していませんが、遺伝や感染などが引き金となり起こることもあります。
自分の免疫機能が自分自身の赤血球を攻撃し壊してしまうことで起きます。
免疫機能が関与していて重篤になると生命にかかわるとても怖い病気です。
感染症ではヘモプラズマ症という病気が原因となります。これはマイコプラズマ(細菌)によって赤血球が破壊されてしまうことにより血色素尿が出ます。
血色素尿は赤血球が急速に破壊されている時に起こる症状ですので、貧血など重篤な状態に陥っている可能性もあります。赤い尿がみられたら病院へご連絡ください。
血色素尿のほかに筋色素尿と呼ばれるものもあります。
血色素尿はヘモグロビンが尿中に排出されますが、筋色素尿(ミオグロビン尿)ではミオグロビンという物質が尿中に排出されることで起こります。ミオグロビンは筋肉の細胞内で酸素を運搬する役割を持つのですが、何らかの原因で筋肉が破壊されたり炎症を起こすとミオグロビンが尿中に排出され尿が茶色っぽくなります。
血尿の原因は・・・?
血尿は尿を作る腎臓や尿の通り道が傷ついていることや、生殖器の病気などが原因で起こる症状なので病気を発見するための重要なサインになります。
血尿が出ている場合に考えられる病気として下記のようなものがあります。
・膀胱炎
・尿路結石
・膀胱腫瘍
・前立腺の病気 など
避妊をしていないメス犬の場合、血尿ではなく発情による出血が尿に混ざっている可能性もあります。
発情による出血なのかどうか陰部の様子を確認しましょう。発情が来ている場合には普段より陰部が腫れています。
約半年に1回の周期で発情出血が見られることが多いですが、判断がつかない場合は診察をお勧めします。
膀胱炎
犬ではメスに多く見られ、細菌感染が原因で起こる膀胱炎が多いです。
血尿だけでなく排尿回数が増える頻尿なども症状としてみられます。詳しくはこちらを参考にしてください。
膀胱から感染が拡がり腎臓まで細菌が及ぶと腎盂腎炎となってしまう可能性がありますので早期の治療が必要です。
尿路結石
犬猫、年齢問わずみられるものとしては尿路結石があります。
結石が尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)を通るときに傷をつけてしまうことで出血し、血尿が出ます。
特に1日以上尿が出ていない場合は尿路のどこかで結石が詰まってしまっている可能性があり生命に係わることもあります。
おかしいなと感じたら、様子を見ずにすぐに動物病院へ行きましょう。
膀胱腫瘍
膀胱の一部の粘膜から発生する腫瘍で、そのうち良性のものがポリープ、悪性のものが膀胱がんと呼ばれます。
犬に発生する膀胱腫瘍のほとんどが悪性であることが多いです。
悪性腫瘍が尿管を塞いでしまうような場合には命の危険があるため早急な処置が必要になります。
前立腺
前立腺はオス犬の尿道周囲にあり精液を作る組織で、病気として多いものが前立腺肥大です。
これは去勢手術を行っていない高齢犬に多く見られ、前立腺が肥大することで尿道が狭くなり尿が出にくくなります。
そのためトイレに何回も行くのに尿は少しずつしか出なくなることがあります。
他にも前立腺の病気には前立腺炎や前立腺がんなどがあります。
前立腺肥大は去勢手術によって防ぐことのできる病気です。そのため繁殖の意思がない場合は去勢手術を行いましょう。
尿検査
血尿が出た場合に行う検査はどのようなものがあるでしょうか。
一般的には尿検査と超音波検査を行います。
また症状によってはレントゲン検査や超音波検査、血液検査を行う場合もあります。
血尿の原因を突き止め、その原因となる病気の治療をすすめていきます。
まとめ
血尿・血色素尿を早期発見できるように普段から尿の色や量、トイレ時の姿勢、トイレの回数などはよく観察するようにしましょう。ペットシーツを使用している場合は尿の色の変化がわかりやすいように、ピンク色のペットシーツの使用は避けたほうがよいでしょう。
一口に赤色の尿といっても様々な原因があり、上記以外にも考えられる病気があります。
場合によっては生命にかかわる重篤な病気ということもあります。排尿時の様子が異なったり、尿の色が違うなど異常が見られたら早めに動物病院へ行きましょう!