犬の膀胱結石
当院で実施した外科症例について紹介します。
今回は膀胱および尿道結石の症例です。
※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。
プロフィール
犬 チワワ 去勢雄 13歳
来院理由
健康診断
検査
元気食欲に問題はなく、身体検査ではBCS5/5、腰背部痛が認められた。可視粘膜色およびCRTは正常であった。
健康診断として行ったエコー検査にて膀胱内に結石が認められた。
診断
膀胱結石、尿道結石
手術までの経過
血尿等の膀胱結石に由来する症状は認められなかったため食事療法を行い経過観察のため定期検査を実施。その後、尿道内にも結石が認められ、改善が乏しいため手術を検討。
結石を確認してから約4カ月後には尿を出しづらい様子、血尿、頻尿の症状が認められた。
外科手術
全身麻酔下にて膀胱切開術を実施した。尿道内の結石に関しては、生理食塩水で十分に洗浄し、膀胱内に移動させた後に取り除いた。膀胱を縫合し漏れがないか確認。
術後の尿量や尿の性状をモニタリングするため、また手術をした膀胱を休ませるため、尿道カテーテルを留置した。
摘出した結石は成分分析の検査実施。
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結石分析結果
シュウ酸カルシウム
手術後の経過
手術2日後に尿道カテーテル抜去後、自力排尿が認められており、血尿等の尿の性状に問題はなかった。
手術から3日後に消炎鎮痛剤、抗生剤を処方し退院。
今後は定期的に膀胱エコーと尿検査を実施し、再度結石の形成がないか経過観察とする。また、結石形成の予防のために、尿路系に配慮された療法食を継続する。
膀胱結石について
今回の症例のように、エコー検査で膀胱や尿道内に結石が認められた場合、その大きさや数などから治療プランを立てます。結石について詳しくはこちらの記事で解説していますのでご覧ください。
結石が認められると、血尿や尿量が少ない、排尿姿勢をとるが十分な量の尿が出ていないといった症状がみられる場合があります。特に尿量に関しては注意が必要で、尿が全く出ていない場合には尿道閉塞の可能性が考えられ、この場合は命に関わるため緊急的な処置が必要になります。
膀胱結石の種類として、リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)とシュウ酸カルシウムなどのカルシウム結石の2種類が大部分を占めます。前者は一般的に尿路系に配慮された食事に変更する、食事療法で溶解可能とされる種類の結石です。一方後者は、食事の変更では溶解されない種類の結石で、外科手術が適応となる結石症の大部分を占めます。
本症例では、食事療法で溶解せず、また尿道内にも結石が認められており、これがそのまま尿道内に詰まる(尿道閉塞)場合も考えられたことから外科手術の適応となりました。
手術後の管理として再発防止の目的で尿路系疾患に配慮された療法食を与えることが推奨されます。このような療法食は、通常の食事と比べ結石のもととなるマグネシウムやカルシウムが制限されていること、膀胱粘膜を保護するためのグルコサミンやコンドロイチンが多く配合されていること等が特徴として挙げられます。
また尿が濃くなるとその分結晶の形成が促進され、それらは結石のもととなります。そのため、動物が常に新鮮な水を十分に飲めるよう環境を整えてあげましょう。さらに、尿路感染症は結石症を増悪させる因子となります。尿路感染症と診断された際には、これを慢性化させないために、投薬などの治療をしっかりと行うこと、尿を我慢することがないよう環境を整えてあげることも重要となります。
日ごろからよく様子を観察いただき、血尿、頻尿、尿が出ない(出にくい)等といったいつもと違う症状に気が付いた際には、すぐに動物病院にご連絡ください。
また、ごはんに関するご相談も承ります。お気軽に当院スタッフまでお声がけください。
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