うちの子、目が白くなってきた!?犬や猫でも白内障になるの?

最近うちの子、目が白くなってきている気がする。そのように感じることはありますか?

それは白内障かもしれません。

よく耳にする言葉だけどよく知らない。人でもあるけど動物でもあるの?そんな疑問を今回一緒に学びましょう。

 

白内障について

目には、カメラのレンズに相当する水晶体という部分あり、そこが白く濁る病気が白内障です。

犬猫ともに起こり得る病気ですが、犬で比較的多く認める病気です。

白内障は進行性であり、初期の段階では視覚障害はありませんが、進行するにつれ視覚障害が生じ、物にぶつかったり、段差につまずくなどの歩行異常が見られるようになり、最終的には失明します。

また、進行に伴い、二次的にぶどう膜炎(眼球内の炎症)や緑内障(眼内圧力の上昇)などを引き起こすこともあります。

ぶどう膜炎や緑内障は炎症により目に強い痛みや違和感などで目が開けられない、目の中で出血を起こし赤くなる、眼球自体が大きくなるなどの重篤な症状が生じる場合もあります。

白内障は、数日から数週間という短期間で進行してしまう場合もあれば、数年にかけて緩徐に進行していく場合もあります。

同じように目が白く見える病気として核硬化症があります。核硬化症は年齢に伴い発症し、白内障とは違い、視覚障害を起こすことはありません。

水晶体内部の核とよばれる部分の水分量が減少し、圧縮され硬化し、レンズの屈折率が変化を起こし光の具合で白く見えます。

初期の白内障と核硬化症は見た目で判断がつきにくいこともあり、検査をする必要があります。

 

原因

白内障の原因として、病因別に分けると先天性白内障と後天性白内障に分別されます。

先天性白内障は遺伝性要因などにより発症し、後天性白内障は加齢、外傷、糖尿病、中毒など様々な要因が関連しています。糖尿病や中毒など、直接的に目と関連が無いものでも白内障を誘発してしまう点は注意が必要です。

猫の白内障は外傷によるものが多く、爪などでひっかかれた傷が水晶体まで達し白内障を発症することがあります。

白内障は、老齢動物で認めることが多いですが、全ての年齢で発症し、2歳未満の若齢期で発症することも少なくありません。

 

好発

遺伝的に発症しやすい犬種はアメリカン・コッカー・スパニエル、プードル、柴犬、ビーグル、ヨークシャー・テリアなどであり、これらの犬種では白内障を多く認めます。

 

病気によるグレード分け

臨床的に最もよく用いられるグレード分けは、「初発白内障」「未熟白内障」「成熟白内障」「過熟白内障」であり、初発から過熟にむかい徐々に水晶体の混濁度が増していきます。

初発白内障は水晶体の15%程度までの混濁度であり、未熟白内障は15%以上の混濁度であり、視覚はある状態です。

成熟白内障は混濁が水晶体全体に広がり、視覚を失った状態です。過熟白内障は水晶体が溶けてしまい、水晶体成分が眼の中に広がり、ぶどう膜炎などの合併症を引き起こします。

治療

人で思い浮かべる白内障の治療は手術かと思います。日帰り手術でも可能というのは有名ですよね。動物の場合の白内障の治療は内科療法と外科療法に大別されます。

内科療法は点眼薬で行い、初期段階で開始することが重要です。点眼薬は、進行して視覚に障害が出ている段階の白内障を回復させることはできません。進行を遅らせ、ぶどう膜炎などの合併症を防ぐことが目的ですが、点眼薬を実施していても急速に進行してしまう場合もあります。大事なことは、動物への負担なく点眼を続けることです。

そのためには、点眼の前後でおやつなど喜ぶイベントを行いましょう。そうすれば、点眼をすれば嬉しいことが待っていると認識し、負担なく点眼ができるようになります。

アスタキサンチンなどの抗酸化作用のあるサプリメントもありますが、こちらも進行を遅らせることが目的です。

内科療法で管理が難しく、視覚障害が出ている場合には外科療法となります。

外科療法、いわゆる手術は全身麻酔で行います。手術前に各種眼科検査を行い、合併症がなく手術後に視覚の回復が期待できるかどうかを判断します。基礎疾患がある場合や手術後に視覚の回復が期待できない場合には手術が見送られる場合もあります。

手術は、眼球に切開を加え、白く濁った水晶体を超音波の振動で砕き、細かくなった水晶体を吸引し、水晶体の代わりとなるレンズを挿入します。術後より視覚は回復し白く濁った水晶体がなくなりますので、見た目も正常に近いものとなります。

術後の合併症としては、ぶどう膜炎や緑内障、水晶体脱臼、網膜剥離などがあげられます。

 

失明したら

人の場合、もともと見えている方が失明してしまったら一般的な生活に支障が出てきてしまいます。一方動物の場合は大きな支障はきたさず生活を送れる場合もあります。もともと動物は視覚が弱く嗅覚と聴覚に優れています。そのため、視覚を失っても嗅覚と聴覚が視覚を補い、一般的な生活を送れることは少なくありません。

もちろん、行ったことがない場所では動かなくなってしまうこともありますが、ご自宅ではまるで目が見えているかのように生活を送る動物もいます。

ポイントとしては家具や物の配置は変えず、目が見えていた頃と同じにしてあげてください。配置を変えてしまうとぶつかることが多くなり、時には目をぶつけてしまい傷がついてしまうこともあります。

動物の性格によっては目が見えないため動くことを怖がってしまうこともあります。そのような場合には飼い主が動物の目となり誘導し、声をかけてあげることで少しずつ慣れてくれて、大きな支障なく日常生活を送れるでしょう。

 

目は日常で最もよくみる部位でありながら、皮膚などに比べ、変化がわかりづらい部位でもあります。日頃よりよく観察し、些細なことでもご不安な点があれば獣医師や動物看護師にご相談ください。

この記事を書いた人

石井 (ALL動物病院行徳院長 皮膚科学会認定医)
皮膚疾患に悩むご家族をはじめ、ご来院のみなさまにご相談していただきやすいような雰囲気づくりに努め二人三脚での治療をしています。2児の父で特に好きな犬種はプードル。日頃の運動不足解消のため暑さ寒さに負けず自転車通勤している。