犬と猫の玉ねぎ中毒にご注意!

カレーライス、ハンバーグ、牛丼、ポトフ…多くの料理に使われるタマネギ。美味しいですよね。

そんな美味しいタマネギも、犬や猫にとってはかなり危険な食材であることをご存知でしょうか。

今回は犬と猫のタマネギ中毒についてお話をします。

 

なぜネギ類はダメなの?

美味しいタマネギ。なぜ犬と猫は食べてはいけないのでしょうか。

タマネギには「有機チオ硫酸化合物」という成分が含まれており、赤血球を酸化させる作用を持っています。赤血球が酸化すると酸素の運搬役であるヘモグロビンが変化してハインツ小体という物質を形成することで構造がもろくなり、異常な赤血球となります。

赤血球は脾臓を通じて正常なものと異常(もしくは古い)なものに振り分けられますが、ハインツ小体を形成した異常な赤血球は脾臓の機能により破壊されてしまいます。

赤丸がハインツ小体、緑丸が正常な血球です。

 

赤血球が体内で壊されてしまうことを溶血といい、この溶血により貧血が起きます

溶血を起こすと血液の液体成分の血漿が壊された赤血球のヘモグロビンにより赤く変化します。

 

血液の働きについてはこちらをご覧ください。

 

私たち人間は有機チオ硫酸化合物を分解する機能を持っているため、過剰に摂取しなければ問題が出ることはほとんどありません。

しかし、犬猫には分解能がないため、赤血球が破壊されてしまうのです。

また、有機チオ硫酸化合物は加熱や加工をしても毒性は消えませんので、形として目に見えなくてもドレッシングやスープなどに含まれていれば同じです。

ネギ科の植物には有機チオ硫酸化合物が含まれているため、十分注意が必要です。

 

どのような症状が出るの?

タマネギ中毒の代表的な症状は貧血です。そのほかにも嘔吐や下痢が見られたり、貧血の進行に伴う血色素尿、黄疸、痙攣発作などが挙げられます。

残念なことに、中毒症状が出るとされる摂取量などは定められておらず、かなりの個体差があります。少量でも症状が出ることもあれば、明らかに食べていても症状が出ないこともあります。

命にかかわることもある恐ろしい病気です。

 

誤食してしまったらどうすればよい?

タマネギを誤食してしまった場合はかかりつけの動物病院に相談をしましょう。

ご連絡の際には食べてしまった量や時間が分かるとなお良いでしょう。

誤食後1~2時間以内であれば吐かせることが出来るかもしれません。しかし、吐かせる処置で必ずしも出てくるわけではなく、来院による緊張感や興奮により薬剤が効かない場合もあります。

食べてしまった量が分からない、いつ食べたか分からない、食べたかどうか分からないけれど量が減っているなどの場合でも同様に、まずは動物病院に相談をしましょう。

個体差はありますが、有機チオ硫酸化合物を吸収してから赤血球が破壊されるまで時間がかかります。誤食後すぐに症状が出ることは少なく、数日経ってから血色素尿などが急に見られることがあります。

誤食の可能性が少しでもある場合は、最短でも1週間は注意深く様子を確認しましょう

 

診断と治療は?

中毒症状に有効な特効薬などはほとんど無く、タマネギ中毒に対して行うのは、対症療法(病気の原因ではなく主要な症状を軽減させるもの)です。

つまり、治療をしても新たな症状が出たり、重篤な状態に変化する可能性があるということです。

対症療法には吐かせる処置、点滴などいくつかの方法はありますが、あくまでも現在出ている症状や今後疑われる症状の予防を目的とするため、経過を追って治療の判断をしなければなりません。

吐き出せたからと言っても症状が出るリスクは残るため、体調が回復していても必ず獣医師の指示の下、再診察を受けましょう。

また、重度の貧血の場合は輸血治療が選択されます。

状態によっては一度だけでなく、複数回輸血が必要になるケースもあります。

たかが誤食、されど誤食です。ほんの少し…が、命を奪うリスクを秘めているのです。

 

日ごろからできる対策としつけ

タマネギ中毒の最大の予防策は「誤食を防ぐこと」です。

誤食リスクはどのご家庭にも日常的に存在していますので、環境整備やしつけがとても大切です。

・「マテ」 「ヨシ」のコマンド

どの距離でも「マテ」ができるとgoodです!その後は「ヨシ」の解放コマンドも忘れずに。

・台所に入れない

先ほどの「マテ」やベビーゲートなどを使って物理的には入れない状態をつくることもできます。

・下に置かない

・食事中はフリーにしない

・口を触れるようにしておく

 

誤食をしてしまう物はさまざま…。今回はタマネギ中毒についてお話をしました。

中毒は予後が悪いこともある大変恐ろしい症状です。

美味しいタマネギですが、犬や猫にとっては非常に危険な物であることを忘れないようにしましょう。

この記事を書いた人

藤咲(愛玩動物看護師)
当院の看護主任として日々奮闘中。責任感が強く真面目な性格と自負しており、ご家族からも頼られることが多い。小学校などで子供たちと犬との触れ合いの場を設ける動物介在教育にも力を入れており、休日には愛犬とともに参加している。ご家族やペットのお名前を覚えるのが得意で、スタッフからも「人間カルテ」と言われる記憶力が自慢。