鼻血は怖い?犬と猫の鼻血のあれこれ
犬や猫も鼻血が出ることがあります。原因となる病気や重症度によって、その出血量や色(鮮血~薄いピンク色)、鼻水に血液が混ざっている程度であるなど鼻血の種類も様々です。
鼻血の原因は外傷、鼻腔内異物、歯周病、鼻炎、副鼻腔炎、高血圧、腫瘍、血液凝固異常、特発性(原因不明)などがあります。
一時的な鼻血もあれば、止血が困難であり治療が長期に及ぶこともあります。
今回は鼻血について原因別に解説していきます。
外傷や鼻腔内異物による鼻血
傷口からの出血、または鼻の中に入った異物の刺激によって出血します。
受診時に出血が止まっている場合は抗生剤や止血剤の内服、点鼻薬で済むこともありますが、麻酔下での異物の除去と出血している部分の確認、止血が必要になる場合もあります。
鼻炎・副鼻腔炎による鼻血
細菌やウイルスによる感染症(猫風邪やケンネルコフ)やアレルギー性の鼻炎によっても鼻血がでることがあります。くしゃみや鼻水の症状に続いて、鼻水に血液が混ざって出ることが多いです。ケンネルコフについてはこちら(ケンネルコフ ・ 猫風邪)をご覧ください。
副鼻腔炎では鼻炎よりも症状が長引くことがあります。
それぞれ炎症の原因により治療法は異なりますが、細菌・ウイルス感染に対しては抗生剤・抗ウイルス薬・消炎鎮痛薬・抗炎症薬などを使用します。食欲や元気がない場合は点滴や入院が必要な場合もあります。鼻水についてはこちらをご覧ください。
歯周病による鼻血
高齢の犬猫で多くみられるのは歯周病が進行し、鼻血の原因になっているという状態です。上顎の歯根は鼻腔の近くにあるため、歯周病菌の影響で炎症が起こると組織が脆くなり鼻血が出るようになります。
歯周病による鼻血は歯周ポケットに蓄積した細菌が原因です。治療には抗生剤や消炎鎮痛剤、止血剤などを使用しますが、根本的な治療にはならないため全身麻酔下での歯石除去、抜歯処置が必要に応じて行われます。
歯周病はご自宅でのデンタルケアによって予防することができます。歯みがきのコツについてはこちらで紹介しています。
鼻腔内腫瘍による鼻血
鼻の中にできる腫瘍が原因で出血することもあります。これも高齢の犬猫で起こりやすく、ダックスフントなどの鼻の長い犬種や中~大型犬に比較的多くみられます。
鼻の中にできる腫瘍としては腺癌、扁平上皮癌、軟骨肉腫、骨肉腫、リンパ腫などがあり、これらがすべて悪性に分類されます。
腫瘍は見た目だけでは判別できないため、画像検査のレントゲンやC T検査などをした上で組織生検を行い、病理検査をすることでどの腫瘍なのかを調べます。
腫瘍が進行すると、初めは片方の鼻の穴からだった鼻血が左右から出るようになります。
また、腫瘍が大きく膨れ上がることで顔面の変形などが起こることもあります。鼻腔内腫瘍に対する治療には放射線治療、抗がん剤治療、外科的摘出があります。
*で示した領域が鼻腔内腫瘍によって白く写っている
血液凝固異常による鼻血
出血をした場合、通常であれば血小板などの成分が止血のためのはたらきをします。しかし、止血成分の欠乏や、遺伝的異常によって出血が止まりにくくなる病気があります。
この場合、ちょっとした出血が止まらなくなってしまいます。鼻血だけでなく血尿や血便、採血後に針を刺した部分から出血が続く、知らない間にアザができているなどの症状が見られます。止血ができない病気についてはこちらをご覧ください。
鼻血が出たときの対処法と注意点
鼻血が出たら、いつから、どちらの鼻の穴から、どんな色の鼻血が、どれくらいの量出ているのか、きっかけがあるのかを記録しておきましょう。鼻血以外に普段と違う様子がないかどうかも獣医師が鼻血の原因を探る上で大切なヒントになります。
受診までの間、人が鼻血を出したときのように鼻の穴にティッシュやコットンなどを詰めてはいけません。人とは異なり鼻腔が広くないため、呼吸困難を起こす可能性があります。また、かえって出血している部分を傷つけてしまうことによる悪化や、誤ってティッシュを食べてしまうこともあります。
まず、安静にさせて清潔なタオルやガーゼでそっと拭き取りましょう。可能であればタオルを巻いた保冷剤などで鼻を冷しながら動物病院へ向かうのも一つの方法です。
まとめ
動物にとって鼻血が出ることは異常なことです。いつもと様子が変わりなく元気に見えても、とても重い病気が進行しているケースもあるため油断は禁物です。鼻血が出ていたら早急に受診できるよう、普段からよく様子を観察しわずかな異変に気付いてあげましょう。
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