犬の毛つやが悪くなってきた、毛がよく抜ける、食欲はかわらないのに太ってきた。それ甲状腺機能低下症かもしれません。
こんな症状ありませんか?チェックしてみましょう。
2つ以上当てはまると、もしかしたら甲状腺の病気が隠れているかもしれません。
甲状腺って何?
甲状腺は首にある甲状腺ホルモンを分泌しています。
甲状腺ホルモンは体の代謝を司るホルモンの一つで、脂肪や糖分を燃やして細胞の新陳代謝を盛んにする、体が興奮状態になる交感神経を刺激する、成長や発達を促すといった作用があります。
このホルモンの分泌が少なることで全身の代謝がうまくいかなくなり、皮膚の異常や脱毛、徐脈(心拍がゆっくりになりすぎること)や不整脈、筋硬直や歩行異常、顔面神経麻痺や喉頭麻痺などもおこることがあります。
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症の原因としては、免疫介在性(免疫機能の異常により甲状腺が破壊されてしまうこと)や甲状腺そのものの機能不全が多いです。脳の異常で下垂体性や視床下部性によるものは多くありません。また甲状腺腫瘍でも甲状腺機能低下症がよく起こります。
甲状腺腫瘍と聞くと、甲状腺ホルモンがたくさん分泌されるイメージをしやすいですが、実際のところ甲状腺ホルモンの数値は正常か、むしろ低下していることがほとんどです。
甲状腺機能低下症の診断
なんとなく元気がない、毛艶がよくない、雰囲気に覇気がない、年齢のせいもあるだろうけど寝てばかりいる、そんなに痩せてるわけじゃないけど寒がりだな等といった症状が続いている場合には甲状腺機能低下症も診断リストに加わってきます。
臨床症状から、怪しいと思われた場合には一般血液検査と生化学血液検査、甲状腺ホルモンの数値を測定します。
甲状腺機能低下の診断には臨床症状も併せて診断することが大事になってきます。
生化学検査だけでは確定診断はできませんし、症状だけでも診断はできません。
症状から疑わしければ、3つある甲状腺ホルモン(T4 , fT4 , TSH)を測定する検査に進みます。
血液検査は、12時間の絶食と午前中に行うことで、正確な診断につながりやすいです。
T4は午前中にたくさん分泌される傾向があります。甲状腺機能低下症で特徴的な高コレステロールや高トリグリセリド血症が、12時間の絶食でほとんど食事の影響がでなくなるからです。
甲状腺機能低下症の治療
甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン)の内服薬を使用します。
心臓に病気があったり糖尿病などを併発している場合には通常の半量からスタートします。
お薬を初めて4週間後に血液検査をしてT₄の数値を測定しましょう。4~5㎍/㎗でちょうどいい数値と言われています。
内服中は投与後4~6時間後に測定するのが望ましいと言われていますので、かかりつけの先生に確認しましょう。
6㎍/㎗以上の場合は症状の改善の具合と総合的に判断して薬の量を減らします。
Sick Euthyroid Syndrome
甲状腺が正常に働いているのに、甲状腺以外の病気(腫瘍や全身の感染症、心臓や神経系の病気、貧血、クッシング症候群、糖尿病など)によってもT₃の低下が起こり、T₄も低下します。抗てんかん薬やステロイドの投与などでもT₄が低下します。
基礎疾患の重症度によっては大幅にT₄が低下し、長期間続くことで甲状腺機能低下症のような症状が出てくることがあります。
この状態をSick Euthyroid Syndromeといいます。
基礎疾患を見落としT₄の数値だけを信じてしまうと甲状腺機能低下症と誤診することもあります。Sick Euthyroid Syndromeの犬に甲状腺ホルモン剤を投与するととても危険ですので、必ず考えられるほかの疾患を除外してからの確定診断のもとで服用を開始しましょう。
甲状腺機能低下症の予防
予防法はなく、早期発見と早期治療が大切です。
日常のちょっと違いや変化に、一番早く細かく気づいてあげられるのはご家族です。
気になったらかかりつけの先生に相談したり、健康診断の時に気になる項目として伝えてみましょう。