犬や猫にもてんかんがあることはご存じでしょうか?てんかん発作について解説します。

突然意識を失ってけいれんを起こしたいう話を聞いたことはありませんか?

突然倒れてガクガクしたら驚いてしまいますね。

突然倒れる病気は、低血糖、脱水、脳内の病気、心臓の病気、血流の異常、不整脈、血圧の異常、中毒、代謝の異常、腫瘍など、実に様々な原因が考えられます。

今回はその中の一つである「てんかん」についてお話します。

 

てんかんとは?

てんかんは、脳腫瘍や脳炎など脳に異常がみられる①構造的てんかん、②検査をしても異常がない「特発性てんかん」の2つに大きく分けられます。

痙攣のような症状のことをてんかん発作と呼んでいます。てんかんとは脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的興奮によっておこるてんかん発作を繰り返す病気のこと言います。

 

てんかん発作は脳の神経細胞に勝手に電気が走ってしまうという過剰な興奮によって起こります。この影響が脳に損傷をもたらすと言われています。

脳の血流が悪くなることや発作による損傷は、さらに症状を悪化させるだけでなく、発作が起こりやすくなったり、後遺症が残ったりして生活の質(QOL)も悪くなってきます。

なるべく症状が出ないようにするための薬物治療は動物の将来のためにも大変重要です。

 

てんかん発作の症状はどんなもの??

てんかんの発作には全身性発作や意識が消失しないままの軽度の発作(部分発作)など様々な症状がみられます。

発作には予兆があったり、部分発作のあとに全般性発作が起こったり、繰り返しおこったりします。

 

てんかんの診断と治療

歩く様子や反射などの神経学的検査、血液検査、心機能の検査、MRI検査などが挙げられます。各種検査で痙攣発作を起こすような異常や脳の構造や神経の異常がみられない場合、てんかんと診断されます。

発作は数秒~数分で治まり、何事もなかったかのように過ごすこともありますが、しばらくうろうろしたりもします。ひどい症状になると、発作を短時間のうちに何度も起こしたり(群発発作)、発作が止まらない(重積発作)ということもあります。

全身が強くガタガタするような発作(強直性発作)は、筋肉の振動を伴うため体温の上昇が起きます。40℃以上の高熱が続くと脳や内臓のタンパク質が変性して死に至る場合や、回復しても後遺症が残ることもあります。

症状が初めての場合、自宅での管理が難しい場合は入院管理が必要です。

治療については原因によって異なりますが、抗てんかん薬(ゾニサミド、ジアゼパム、フェノバルビタール、レベチラセタム、ガバペンチンなど)を使用します。

てんかん発作の治療の目標は、2-3か月に一回以下の発作に安定させることです。

完全に0にすることは非常に難しく、季節の変わり目や台風の時期などは症状が出やすいため特に注意が必要です。特に治療が初めての場合は安定するまでに数ヶ月かかることもあり時間がかかります。

抗てんかん薬治療は定期的に血液検査などで抗てんかん薬の効果や副作用をモニタリングすることが重要です。

基本的に生涯に渡って投薬が必要となります。自己判断で投薬を中止したり、減らしたりするとてんかん発作が悪化することもあるので危険です。

必ず獣医師の指示に従って投薬を行いましょう。

 

<おすすめは動画を撮って日記をつけること!>

痙攣や発作を目撃しても言葉で説明するのは難しく、人間の記憶も薄れていくものです。気持ちに余裕があれば動画を撮って保存しておくことをお勧めします。

発作や失神の頻度はその子その子によって異なり、症状も様々です。病院に行こうと思ったら治まっていたり、前回いつ起こったか忘れてしまったりしていることも多いでしょう。

獣医師側の立場でも、いつどういう状況で起こったのかという情報はとても重要ですし、とてもありがたいものになります。

可能な限りでいいので、情報をメモしておくイメージで日記をつけておくと、どんな時に症状が出るのか気づくことができるきっかけができます。

気持ちと状況に余裕がある場合は、動画を保存しましょう。動物病院へ行った際に先生に診てもらうと、言葉よりもうまく伝えることができる有用なツールになります。

 

<すぐに動物病院へ行かないといけない症状!>

失神や発作が一回きりで落ち着いている場合には緊急的に治療を受ける必要がないこともあります。しかし、症状によっては緊急を要する場合もあります。

・息をしていない、苦しそう。

・舌が青かったり白い。

・意識が全くない。

・呼びかけても反応がない。

・発作や失神が10分以上続く。(いつもより長く止まりそうにない)etc…

 

緊急薬を常備されている飼い主様もいらっしゃいますが、それだけでは絶対安心とは限らず、注意が必要です。

上記のような症状がみられる場合は、速やかに病院へ連絡しましょう。

この記事を書いた人

荻野 (獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。