様々な検査についてご紹介します~レントゲン検査編~
健康診断や骨折をしたなどで、レントゲン検査を実施したことがある方は多いと思います。
犬猫も人間と同様に健康状態を把握するためにレントゲン検査を行います。
今回は、レントゲン検査を行う必要性、検査方法、安全性について詳しくお話ししていきます!
レントゲンとは
レントゲンはX線(エックス線)という電磁波を用いて体の内部を画像化する検査です。
ドイツの物理学者「ヴェルヘルム・レントゲン」博士によって発見されたことが、レントゲン検査と呼ばれる由来となりました。
レントゲン検査はなぜ行うの?
動物の胸部や腹部の臓器、器官、骨、歯(大きさ・形)の健康状態を調べるために検査を行います。
例えば、
・階段から落ちてしまい足をあげている
・咳が出ており呼吸が苦しそう
・誤食をしてしまったかもしれない
など…
このような症状がある場合は身体検査のみではわからない体の内部の状態を知るためにレントゲン検査を行います。
短時間で撮影が可能で、撮影後も素早く画像を確認できることから手軽に検査を行うことが出来ますが、レントゲンは体の一方向からの撮影になるため、CT検査やMRI検査と比べると詳細な診断ができません。
しかし、CT検査とMRI検査は360度で撮影できるため内部の詳細な状況まで把握することができ、より確実な診断が可能となります。
〈CT〉
・X線で立体的な画像撮影が可能
・骨格、臓器、腫瘍の有無、異物などの確認が可能
〈MRI〉
・強力な電磁波を用いて撮影
・神経や血管、靭帯などの撮影が可能
・長時間の撮影
基本的にレントゲンの画像はX線が透過しやすい骨や水分、脂肪などは白く写り、X線が透過しにくい空気の多い場所は黒く写ります。胃の中にごはんがあると写るはずのものが写らなくなることもあります。
※透過とは…X線が物質の内部を通り抜けること
また、誤食をした場合は異物の有無や現在どこに異物があるのかを確認するためレントゲン検査を行う可能性があります。
レントゲンは画像に写るもの、写らないものが存在するため、必ず異物が発見できるわけではありませんが、誤食をしたものの種類によっては。
例えば、木製やプラスチック類、ゴム製のものは写りにくく、金属製のものや骨が含まれるものはレントゲンで写し出すことが可能となります。
レントゲン検査方法
レントゲン検査は院内の奥にあるレントゲン室で検査を行うため、ご家族の方は待合室でお待ちいただくことになります。
自分の子がどのように検査されているのか不安な気持ちになる方も多いと思います。
症状や目的により撮影部位が変わりますが、一般的によく撮影される胸とお腹のレントゲン検査方法について説明します。
レントゲンは基本的に胸部3枚(ラテラル2枚、仰臥位1枚)、腹部2枚(ラテラル1枚、仰臥位1枚)で撮影をします。
ラテラル
ラテラルは「横向き」という意味です。
胸部は右下と左下、腹部は右下のみ撮影を行います。
様々な方向から撮影することで、より細部まで臓器の形態などを知ることが出来ます。
仰臥位撮影
仰向けで撮影を行います。仰向けの姿勢は急所のお腹を見せるため嫌がる犬猫は多くいます。
当院ではそのストレスを少しでも軽減するためにふかふかのクッションを使用する場合もあります。
胸部を撮影する際は、肺のふくらみを明確にするために空気を吸った状態の「吸気」で撮影をします。
息を吐いた状態の「呼気」で撮影をすると肺の大きさが分かりづらくなり、少し肺がぼけたような画像になってしまいます。
人では息を吸った後に息を止めてくださいと指示が出ますが、犬猫は息を止めることができないため、体を見て腹部が膨らんだタイミングで撮影を行います。
腹部は胸部とは反対に内部臓器を鮮明に写すために「吸気」で撮影をします。
その他レントゲン撮影
胸部腹部以外にも四肢や頸部、頭部などを撮影することもあります。
例えば、歯処置の際には顎の骨と歯の状況を確認するためにレントゲンを撮影します。
撮影することで、歯を抜く必要性や歯周病の進行具合を把握することが出来ます。
四肢は脚を引きずる様子や痛みがある場合、骨折の有無などを調べる際に撮影を行います。
造影剤を使用する場合
造影剤とは画像診断を行う際に、消化管内部や泌尿器等の構造異常とか見る目的で用いられる医薬品です。
レントゲンのみでは評価できない臓器や器官の機能や形などを写し出す目的があります。造影剤を入れた後は数分間隔で撮影を行うことで、造影剤がどのように流れているかを確認することが出来ます。
消化管造影
消化管造影は主に、レントゲンでは写らない異物や消化管内の異常を発見するために使用されます。異物や異常が発見された場合は、どの部分で閉塞が起こっているのかが明確になるため、その後の処置にも役立ちます。他にも、慢性的に嘔吐や食欲不振などの消化器症状が続いている症例では食道や胃、腸の流れに問題はないか確認するために消化管造影が行われる場合もあります。
尿路造影
膀胱や尿管(尿が膀胱に行くまでに通る管)の位置、機能などを評価するために用いられる検査です。
膀胱炎を繰り返す動物や膀胱腫瘍、排尿が出ない子に対しては尿路が閉塞していないかを確認するための有効な検査となります。
被爆と安全性について
レントゲンで用いているX線は放射線の1種であり、大量に浴びると十年後、体に悪影響を及ぼします。しかし、1回の被爆量が200mSⅴ以上を超えない場合は体に影響はありません。人が1回の胸部レントゲン撮影で0.06mSv以下の放射線を浴びているといわれています。動物の体格により個体差はありますが、動物は人と比べ同程量ないし、より少ない放射線量となります。結果、検査で使用するX線から出る放射線の量は少ないため被爆の心配はほとんどありません。また、撮影範囲や枚数は最小限に抑えておりますので、ご安心ください。
病気の早期発見に役立つ!
当院では、シニア期(7歳以上)に突入した犬猫には健康診断の際にレントゲン検査をおすすめしております。
気になる症状がないとしても、検査を行うと異常が見つかる場合もあります。
もちろん、若齢期にレントゲン検査を行うことで、シニア期との体の違いを比較することが出来るので正常なレントゲン画像を記録として残しておくこともよいでしょう。
レントゲン検査はご家族が検査風景を直接見ることの出来ないため、不安も大きいと思います。ご不明点や不安な点がございましたら、スタッフにご相談ください。