その病気、人にもうつるかも。人獣共通感染症について~人と動物と環境の感染症の話~
人獣共通感染症って何?
皆様は人獣共通感染症という言葉は聞いたことはありますか?
人獣共通感染症とは動物から人または人から動物にうつる病気の総称をいいます。
近年パンデミックを起こした新型コロナウイルス感染症も人獣共通感染症の1つです。
ウイルスや寄生虫といった病原体が人と動物だけでなく食物や環境を通じて広がっていきます。
厚生労働省では人の健康の観点から「動物由来感染症」いう名称も使われています。
今回は人の立場に立って人獣共通感染症について見ていきましょう。
WHOの「人獣共通感染症」の定義
WHO(世界保健機関)では人獣共通感染症は「人と人以外の脊椎動物の間で自然に移行する病気または感染」と定義されています。
動物から人へ、人から動物へ感染する疾病であり近年の交通網の発達により人々の移動や物資の移動が増加し、今まで国内で発生していなかった共通感染症も見られるようになってきました。
One Healthの考え方について
人獣共通感染症は全ての感染症の半数を占め、獣医師・医師・動物に携わる人たちは人獣共通感染症に対して危機感を持っています。
人・動物・環境を健全な状態に保持していくには、地球環境だけではなく経済・政治・ビジネスなど様々な分野が一体となり健康を守る=「One Health」への取り組みが重要と言われています。
人獣共通感染症はどのように広がるの?どんな病気があるの?
1.感染経路
病気を感染するにはウイルスや細菌、寄生虫といった病原体、感染経路、感受性動物(病気にかかる動物)の3つの条件が必要となります。
感染症が移ることを伝播といい、伝播の方法は主に2通りに分けられます。
①直接伝播
接触や咬傷、ひっかき傷、経口によって病原体が直接侵入すること
②間接伝播
・ベクター媒介:病原体が感染動物から人へ侵入する際に節足動物などが運んでうつす
・環境媒介:汚染された水や土壌を接触したり飲んだりしてうつる
・食品媒介:病原体を持っている動物(食品)を加熱せずに食べることでうつる
2.病気の種類
人獣共通感染症は世界に約800種あると言われています。今回は主に身近な犬や猫から感染する可能性のある病気についてこちらに記載しましたのでご参考ください。
狂犬病については日本では法律で犬のワクチン接種が義務付けられております。詳しくはこちらをご覧ください。
またマダニから感染する重症熱性血小板減少症(SFTS)についても感染後の致死率の高い病気です。山や野原に出掛ける方だけでなく、日頃の生活でも街中でマダニが付着する可能性はありますので予防をしっかりと行いましょう。重症熱性血小板減少症(SFTS)についてはこちらをご覧ください。
感染症から身を守るために心がけたいこと
・こまめな手洗いうがいを心がけましょう。
・環境の清掃も重要です。日頃のこまめな掃除に加え、アルコール消毒薬や薬剤での消毒も定期的に行うと良いでしょう。
なおペットの感染が疑われた場合、アルコール消毒では不十分な場合があります。次亜塩素酸ナトリウムなどを使用し清掃を行うことが必要となる場合があります。詳しくは病院スタッフにお尋ねください。
・ペットとの過度なスキンシップを控えましょう。ペットと同じ食器の使用や口移しで感染することがあります
・ペットも人も定期的な健康診断、ワクチンやノミ・マダニ予防を行いましょう
日頃の運動とバランスの良い食事で自身の免疫力を高めましょう。
・野生の動物や野良猫などにはむやみに触らず適度な距離を保ちましょう
当院では予防や日常の中で気をつけるべきポイントなどのご相談も承ります。お気軽にお声かけください。