犬や猫が血を吐いた! ~“吐血”と“喀血”の違い~

「うちの子が突然血を吐いた!」

たとえ少量だとしても、こんなことが起きたら驚きますよね。

今回は“吐血”と“喀血”の違いについてお話します。

 

口から血を吐いた場合は吐血か喀血の可能性があり、原因となる出血部位により分類されます。

吐血は消化器(咽頭、食道、胃、小腸など)からの出血が原因で起こります。

それに対して喀血は気道など呼吸器(喉頭、気管、気管支、肺など)からの出血が原因で起こります。

吐血とは異なり、咳とともに血を吐くことを指します。

それぞれの原因を図に示します。

 

確認ポイント

吐いた際に血液のようなものが混じっていた場合、吐血と喀血どちらの可能性が高いのか判断する必要があります。

吐血と喀血にそれぞれ違いはあるものの、実際には吐いた際に吐物を飲み込んでしまうことも多く発見が困難な場合もあります。

また、飲み込んだ際の誤嚥や窒息のリスクもあります。

 

原因を早急に特定するために以下のポイントが重要となります。

血を吐いた場合には、その色や性状に注目してみましょう。

吐血…暗赤色 コーヒー残渣様色 泡沫が含まれることがある

喀血…鮮血色 ピンク色(血液を水で薄めたような色) 泡沫状の痰が含まれる

その他にも下記の図に示すようにチェックしていただきたい項目があります。

どれか1つでも大切な情報となりますので、ぜひチェックしていただければと存じます。

 

これは危険…!すぐに来院すべきケース

次に、すぐに病院に来ていただきたい症状の一例を以下にご紹介いたします。

・出血が止まらない

・毎日(または日に2回以上)吐いている

・咳が続いている

・よだれが増えた(口周りが濡れる よだれがポタポタ垂れるなど)

・呼吸時にゼロゼロと音が鳴る

・食欲廃絶(全く食べない)

・口の中にできものが見える など…

このような症状がみられた場合は、

上記に当てはまらない場合でも「血を吐く」ということだけで普段とはもちろん異なるため、ご心配な時は診察をおすすめいたします。

 

原因を特定するために

原因が分からなければ症状の改善は困難です。

前触れはあったのか、持病があるのか、咳が出ているのか、吐いた後苦しそうにしているのか、何かを食べた後なのか、吐物はどんな色なのか…など様々な点を確認しながら判別をしなければなりません。

舌下に2×1cmの大きさの腫瘤が認められています。

内視鏡検査で腸管に出血が認められています。

 

喀血で一番遭遇しやすい注意すべき疾患“肺水腫”

肺(水色で囲った部分)が黒く映っていて、きれいな状態です。

肺水腫の状態です。肺胞内に液体成分が貯留し、肺(水色で囲った部分)に白くモヤモヤと見えます。

 

喀血で最も遭遇しやすい原因疾患が肺水腫です。

肺水腫とは、心疾患や肺炎などが原因で肺に水分が貯留してしまう状態のことを指します。

肺水腫になると呼吸によるガス交換がうまくできなくなるため、呼吸が普段より浅く速くなり、痰や水分が絡んだような湿った咳が出ることもあります。

そのため、血液が混じった赤~ピンク色の液体を咳とともに吐き出すことがあります。

呼吸状態の悪化により体調が急変することもありますので、注意が必要です。

肺水腫の詳しい解説はこちらをご覧ください。

 

原因の特定、治療のためにできること

原因の早期発見が治療までの近道です。

検査というと血液検査やエコー検査などのイメージが強いかと思いますが、身体検査による口の中などのチェックや吐物の性状を目で見て確認することもとても重要です。

いきなり口をパッと開けられるのは、動物も驚いてしまいますよね。

普段から顔周りを触ったり口の中を見せることに慣れておくと、原因の特定や投薬などその後の治療にも役立ちます。

また、吐物の性状も原因の特定の大きな手掛かりとなります。

診察時にご持参いただき実際に確認できるのが良いのですが、水分が多いためご来院までの間に性状が変化してしまいますし、そもそも吐物を持参するのはかなり大変ですよね。

ここで有効な方法が写真を撮ることです。

言葉にして説明しづらい微妙な色や、吐いた量など写真から得られる情報もたくさんあります。

また、何度か吐いている場合は色や内容物が変化する可能性もあるため、写真を残しておくことで比較をすることができます。

 

吐血、喀血はすぐに治療が必要なケースがあり、何よりもまず驚きますよね。

人間と比べると犬や猫は吐きやすい動物ではありますが、いつもと何か違う…という状態が実は病気の症状だったということもあります。

ご心配なことがございましたら当院へご相談ください。

この記事を書いた人

藤咲(愛玩動物看護師)
当院の看護主任として日々奮闘中。責任感が強く真面目な性格と自負しており、ご家族からも頼られることが多い。小学校などで子供たちと犬との触れ合いの場を設ける動物介在教育にも力を入れており、休日には愛犬とともに参加している。ご家族やペットのお名前を覚えるのが得意で、スタッフからも「人間カルテ」と言われる記憶力が自慢。