犬と猫の体温調節はどのように行われているか知っていますか?
体温調節はどのように行われているか知っていますか?
体温調節は間脳の視床下部で行われています。視床下部には体温調節中枢があり、視床下部内を流れる血液の温度変化に反応して体温がコントロールされています。
また皮膚にも温度を感知する受容器が存在し、温点と冷点で得られた温度情報は感覚神経を通して体温調節中枢へ伝えられます。
体温調節中枢では体温を一定に保つ働きがあります。エアコンの温度設定と同じように、設定された温度に体温を保ちます。
この設定された体温を「セットポイント」といい、これによって私たち人間も犬猫も平熱が保たれています。
ところが、何らかの原因でセットポイントが通常より高く設定されることがあります。
例えば、細菌やウイルス感染、炎症などによってセットポイントが上昇すると、体温は上昇し発熱します。
やがて、発熱の原因がなくなるとセットポイントは元の位置(平熱)に戻ります。
体温が下がる仕組み
では、上昇した体温はどのように下がるのでしょうか。
ヒトは汗をかくことで、体温を下げることができます。
汗腺はエクリン腺とアポクリン腺があり、犬や猫はアポクリン腺が圧倒的に多く、エクリン腺は少ないためヒトのような汗をかくことはできません。
そのかわりにハァハァ息をする(パンティング)によって体温調節をします。
その他に、血管を拡張させて血流を良くして体内の熱を外に逃がしたり、骨格筋の弛緩によって熱の産生を抑えることで体温を下げようとします。
発熱時の症状
気温は暑くないのに呼吸が荒い、元気がない、耳や足先が熱い、ふらつきがある、などの症状は発熱の疑いがあります。
見た目で明らかにおかしいと気付けるのは、痙攣、ぐったりして意識がない、陰部から膿が出ている、激しい嘔吐や下痢、血便などです。
犬猫の体温は直腸で測定します。普段の平熱を知っておくことは異常に気付くために大事なことです。
解熱剤で熱を下げても、発熱の原因を治療しなければ熱は下がりません。
発熱の原因
運動によって骨格筋をよく動かしたときにはもちろん体温が上昇しますが、病気に関連する発熱の原因としては熱中症、てんかん発作などによる痙攣、細菌やウイルスなどの感染、怪我、悪性腫瘍、多発性関節炎など免疫系の異常など様々なものが考えられます。
熱中症
犬猫は体温調節が苦手で、散歩の際にはアスファルトなど地面に近い場所を歩くことから熱中症になりやすく、放置してしまうと死に至る怖い病気です。
感染症
感染症は様々な細菌やウイルス、寄生虫によるものがあります。例えば、肺炎、子宮蓄膿症や猫風邪、FIP(猫伝染性腹膜炎ウイルス)、ケンネルコフ、歯周病などでも発熱します。肺炎、子宮蓄膿症や歯周病は放置しすぎると敗血症になり全身に細菌や毒素がまわって死に至ることもあります。
悪性腫瘍
リンパ腫、白血病などの悪性腫瘍(がん)で発熱することもあります。
すべての悪性腫瘍で発熱が起こるとは言えませんが、腫瘍の種類や発生部位によっても症状は異なります。
発熱以外にも、元気食欲の低下、体重減少といった症状もみられます。
また、抗がん剤治療開始後に発熱することがあります。これは体を守る白血球が減少し、細菌が感染することで起こると考えられています。
特発性多発性関節炎
不明熱(発熱の原因がはっきりしない病気)の原因として最も多いのが特発性多発性関節炎です。
自己免疫機能の異常により起こる関節炎で、発熱以外にも跛行(歩行の異常)や元気食欲の低下などの症状もみられることがあります。
発熱時の検査~治療
全身の身体検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査など、原因疾患を見つけるための検査を行います。
前述した通り、発熱には原因があるため、治療は根本原因を治療することになります。
自宅で変化に気付けるようにしましょう
体温が40℃を超え、41℃に達すると脳に障害が起こり意識がなくなることがあります。
さらに42℃を超えると内臓に影響が出てしまい多臓器不全を引き起こして亡くなってしまうことも少なくありません。
体温が高いと感じたらすぐに動物病院へ連絡しましょう。
夏場の暑い時期は熱中症が非常に心配です。室内で過ごしていても熱中症になることがあります。
熱中症対策として、直射日光を避ける、こまめな水分補給、お散歩の時間帯は日の出前か日の入り後に地面を触って5秒耐えられた時だけ行く、エアコンをつけて温度と湿度に気を付ける(27℃前後、40~60%)などがあります。
お留守番中にエアコンのリモコンを誤って操作して電源を切ってしまったという例や人感センサーを搭載している場合、エアコンが停止する可能性もあるため、センサーはOFFにしておきましょう。
それぞれのご家庭に合わせた熱中症対策をしてみましょう。熱中症について詳しくはこちらで解説しています。
発熱時の応急処置として、体を冷やすことが大切です。保冷剤をタオルで包み、首、脇、内股に挟み、可能であれば常温の水で全身を濡らし、風をあてながら病院へ向かいましょう。
運動をした後のように一時的に体温が上がっている場合は、40℃を超えておらず発熱以外に異変がみられなければ、ゆっくり休ませてあげて様子をみてもいいでしょう。
犬や猫は汗腺が人間のように発達していないため体温調節が苦手です。人間以上に暑さに弱く、気温や湿度が高い日は熱中症のリスクがぐっと上がります。
夏場は特に熱中症対策をして、暑い夏を乗り切りましょう。
熱中症以外の発熱はなかなか気づきにくいものです。
ご自宅で体温を測れるようにしておく、またわが子の平熱がどれくらいなのかを知っておくことも大切ですね。
ご自宅での体温測定の方法についてはこちらをご覧ください。