犬もリウマチになる?! 免疫の異常によって炎症が起きる免疫介在性多発性関節炎について解説します
骨と骨をつなぐ関節に炎症が起きることを関節炎といいます。関節炎は、その原因によって炎症性関節炎と非炎症性関節炎の2つに分類され、さらに炎症性は細菌感染の有無により、感染性と非感染性に分かれます。
このうち、炎症があり細菌感染がない関節炎のことを免疫介在性多発性関節炎と呼んでいます。
免疫介在性多発性関節炎とは?
免疫の異常によって、自分の免疫細胞が自分自身の関節を攻撃してしまうことで起こる関節炎のことで、自己免疫疾患のひとつです。
またレントゲン検査によって関節部分の骨が溶けたように見える「びらん性」とそうではない「非びらん性」の関節炎に分けられます。
びらん性の関節炎を関節リウマチと呼んでいます。
非びらん性関節炎は、特発性関節炎、反応性多発性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、犬種特異的多発性関節炎(秋田犬、シャー・ペイ)などがあります。
免疫介在性多発性関節炎の症状
痛みによってみられる歩行異常(跛行)によって気づくことが多く、関節の腫れや熱感、発熱、食欲不振、元気がなくなる、リンパ節の腫れなどの症状もみられます。
跛行は必ずしも起こるわけではなく、少し熱があって、なんとなく元気がないだけということもあります。
関節が溶けることで脱臼すると、ベタ足(手首やかかとなどの地面につかない関節が床につくこと)がみられます。
炎症によって関節液が増加した場合は、関節を動かすことを嫌がり、曲げ伸ばしを避けるようになり、可動域も狭くなります。また1か所の関節炎ではなく、左右対称の複数の関節に異常がみられることも特徴です。
免疫介在性多発性関節炎の原因
発症の原因ははっきりとはよくわかっていませんが、免疫系の異常で起こる疾患です。1度発症すると完治は難しく、うまく付き合っていくしかありません。
特にびらん性である関節リウマチは関節が溶けてしまうため非常に強い痛みを伴います。重症化してしまう前に、早期発見早期治療が重要になります。
免疫介在性多発性関節炎の好発犬種
よく発症する犬種は、ミニチュアダックス、チワワ、トイプードル、シェットランドシープドッグなどです。
その他に、犬種特異的多発性関節炎としては秋田犬、シャーペイ、ボクサー、ビーグル、ワイマラナーが挙げられます。
しかし、どの犬種でもなりうる病気です。
免疫介在性多発性関節炎の検査
歩行検査、触診、レントゲン検査、血液検査を行います。
血液検査では特異的なものはないですが、CRP(炎症の指標となるマーカー)の上昇は必ずみられます。(CRPが高値=多発性関節炎ではない)
レントゲン検査にて軟部組織の腫れ、関節の異常や関節液の増加(fad pad signとよばれる関節液増加の所見)が確認できれば関節液を抜いて顕微鏡検査と細菌培養検査を行います。細菌感染が確認されれば感染性関節炎となり、確認されなければ
免疫介在性多発性関節炎として診断されます。また抗核抗体(ANA)やリウマチ因子の測定も行う場合があります。
また基礎疾患に由来する関節炎は反応性多発性関節炎、基礎疾患がないものは特発性多発性関節炎として診断されます。
免疫介在性多発性関節炎の治療
主に炎症の緩和と、ステロイドや免疫抑制剤を使用して免疫のバランスを図っていきます。
非びらん性関節炎の多くが特発性多発性関節炎(原因がはっきりしない)で、内科治療によく反応するものが多いですが、びらん性である関節リウマチは関節が溶けてしまうため非常に強い痛みを伴います。重症化してしまう前に、早期発見早期治療が重要になります。日常生活を送りやすくしてあげることが大事です。休薬することで再発しやすく、定期的なモニタリングが必要となり、負担の少ない薬の量で長期間維持できるようにしていきましょう。
免疫介在性多発性関節炎は、予防ができない難しい病気です。一度発症してしまうと完治は非常に難しく、重症化してしまう前に、早期発見早期治療が重要になります。
異常に気付いたら早めの受診と治療ができるようにしておきましょう。