表情がおかしい!?犬と猫の顔面神経麻痺のサイン

犬と猫の愛らしい表情にはとても癒されます。にこっと笑った表情や怒ったり、寂しそうだったり昔から「目は口ほどにものを言う」とはよく言ったものだと思います。人間同士のように言葉でコミュニケーションが取れなくても、気持ちが通じますよね。

顔には、表情筋を動かすための神経が通っています。涙腺や唾液腺の分泌に関与する神経でもあり、顔面神経の麻痺が起こると、表情がなくなる、顔が緩む、涙の量が減るなどの症状が起こります。今回は犬と猫の顔面神経麻痺について解説していきます。

 

脳神経とは何か?

脳神経は、脳と体の各部位をつなぐ重要な神経系で合計12対あり、それぞれが感覚、運動、自律機能を司る役割を果たしています。具体的には、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、眼球運動、咀嚼運動、呼吸・消化管の運動・分泌などの機能を司るはたらきがあります。

 

顔面神経麻痺の原因

犬と猫の顔面神経麻痺の原因は、ほとんどがはっきりわからない「特発性」です。原因不明で突然症状が現れます。特発性以外の原因としては以下のようなものが挙げられます。

・中耳炎

・内耳炎

・外耳炎

・腫瘍

・耳道内の異物

・外傷

・手術

・甲状腺機能低下症

・脳炎 など

どの犬や猫でも起こり得る病気ですが、5歳以上のコッカー・スパニエル、ビーグル、ウェルシュ・コーギー、ボクサーが好発犬種と言われています。

猫での発生は比較的少ないです。原因疾患のひとつである甲状腺機能低下症について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

顔面神経麻痺の症状

顔面神経麻痺は表情を作る筋肉を動かすことができないため、瞬きができない、唇が垂れ下がる、食べ物をボロボロとこぼす、流涎(よだれをだらだら垂らすこと)などの症状が見られます。

顔面神経麻痺の症状は左右片側にだけ起こることが多く、正面から顔を見たときに片側の口角だけが上がっていないなどのことからご家族が異変に気が付くことがあります。

縮瞳、瞬膜突出、眼瞼下垂、眼球陥没の4つが同時に起こることを特別にホルネル症候群と呼びます。原因となる疾患と障害が発生している部位によって症状が異なります。

 

顔面神経麻痺の検査

神経が麻痺している原因を探る検査をしていきます。

・問診、視診、触診

・神経学的検査(眼瞼反射テスト、威嚇まばたき反射テストなど)

・血液検査

・耳鏡検査

・レントゲン検査

・CT、MRI検査 など

 

顔面神経麻痺の治療

中耳炎や内耳炎によるものは、抗生剤や消炎剤の投与によって原因疾患へのアプローチが治療となります。レントゲンやCTなどの画像検査にて腫瘍が見つかれば腫瘍に対する治療を行い、原因がわからない特発性の顔面神経麻痺の場合には治療を行わず、経過観察をすることもあります。

神経の回復や維持を目的としてステロイドやビタミン剤を使用するケースや、眼瞼がうまく動かせないためドライアイになってしまうのを防ぐために角膜保護の点眼薬を使用するケースもあります。獣医師とご相談の上で治療方針を決めましょう。ドライアイについて詳しくはこちらをご覧ください。

回復までは個体差があり、治療が早ければ数週間で回復することもあれば、長期的に続くこともあります。完全に回復することが望まれますが、場合によっては一部症状が残ることもあり様々です。

 

顔面神経麻痺の予防

炎症から派生して起こる顔面神経麻痺は、炎症が起こらないようにすることで予防することができます。

中耳炎や内耳炎は細菌性外耳炎から起こることが多く、耳のケアは掃除を適度に行うことや異変に気付いた場合は早めに受診することをおすすめします。

神経はダメージを受け続けて時間が経つと回復が遅れる傾向があります。個体差はありますが、顔の表情に左右差があったり、ごはんが食べにくそうなどの異変に気付いた場合はご相談ください。

この記事を書いた人

荻野 (獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。