犬と猫の鼻水 風邪だけじゃない !その原因と注目するポイント
犬や猫もヒトと同様に鼻水が垂れることがあります。
少量であれば自分で舐めてしまうこともあるためご家族が気付かないことも多いのですが、明らかに鼻水が出ていたり他にも症状が出ている場合は病気の可能性もあるため注意が必要です。
鼻水の役割とは?
鼻の中(鼻腔)は、粘膜を保護するために常に粘液が分泌されています。ここにウイルスなどの病原体やほこりなどの異物が外気と共に入ってくると、体が異物を排出させようとして粘液を多量に分泌します。これがいわゆる鼻水です。
つまり鼻水は、体にとって異物を洗い流す洗浄液のような役割をしています。
鼻水が出る原因
原因としては気温変化や異物などの生理的なものから、感染症やアレルギーによる鼻炎、鼻腔内にできる腫瘤などの病気によるものが考えられます。また、鼻水は鼻に原因があると考えてしまうことが多いのですが、歯周病や口蓋裂と呼ばれる病気が原因になっていることもあります。
それでは原因についてもう少し詳しく見ていきましょう。
生理的な原因
透明な鼻水が少量出ても短時間で治る場合は、生理的な原因によることが多いです。
・気温変化
鼻腔では冷気がそのまま肺に入らないように空気を温める役割があります。それに伴って鼻水の分泌が促されるため気温が低い場所では人間と同様に鼻水が多くなることがあります。
・異物
鼻の中に砂やほこりなどの異物が入ったときにそれらを排出させるために鼻水が分泌されます。一時的な症状で異物が取り除かれる場合は問題ないですが、異物が入ったままで鼻腔内に残っていると炎症や感染の元になり鼻炎を引き起こすこともあります。
病気による原因
透明な鼻水だけでなく、膿性の鼻水や鼻血が出る場合は病気が原因である可能性があります。特に鼻血では腫瘍が隠れている可能性が高いため注意が必要です。また、くしゃみや目やにが出る、元気や食欲低下など鼻水以外の症状がある場合は早めに動物病院を受診しましょう。
・感染症
犬ではケンネルコフ、猫では猫風邪などの感染症が原因で鼻水が見られることがあります。これらの感染症は比較的若齢で影響を受けやすいため、子犬や子猫で鼻水が出ている場合に疑われます。重症化すると肺炎になることがあるため注意が必要です。
猫風邪に関して詳しくはこちらをご覧ください。
その他感染症が関連するものとして細菌性や真菌性などが原因として挙げられ、症状改善が乏しい場合は培養検査を用いて原因を調べていくことがあります。
・アレルギー
アレルギー反応により、鼻の粘膜に炎症が起こることで鼻水が出ることがあります。
アレルギーの原因となるものは、花粉やハウスダスト、タバコなど様々です。
・鼻腔内腫瘍
鼻の中に腫瘍ができると鼻水が出ることがあります。同時に顔の腫れや鼻血などの症状が見られることもあり、悪性のものである可能性が高いため早期発見が大切です。どちらか一方のみ鼻水が多いなどの症状がないかよく観察しましょう。
・歯周病
歯周病が重度になると、鼻と口を隔てている部分に穴が開いてしまうことがあります。そうすると感染や炎症が鼻まで波及して鼻水や鼻出血の原因となります。
歯周病に関しては別で記事がございますので詳しくはこちらをご覧ください。
・慢性鼻炎
今まであげた原因によって鼻汁が長い期間続くことで慢性鼻炎となります。慢性鼻炎の原因疾患として猫風邪(猫伝染性鼻気管炎)が多く見受けられます。この炎症によって鼻の中の構造が変化してしまうことで治りにくくなり、鼻炎と付き合いながら生活していくこともあります。猫風邪では鼻汁だけでなく結膜炎などの症状もみられ、症状が強くなると発熱や食欲不振も見受けられます。
・口蓋裂
口蓋とは鼻と口の境となる上あごの部分を指します。この口蓋に穴があいて口と鼻が繋がってしまう病気を口蓋裂といいます。この病気は生まれつきのことが多いですが、外傷などが原因で成長してから見られることもあります。
鼻水の色と性状
炎症や感染、出血の有無により鼻水の色や性状(粘り気など)に変化が見られます。これを確認することで、原因となっている病気をある程度判別することができます。
・透明で水っぽい
少量ですぐに改善がみられる場合は、生理的な原因である可能性が高いため様子を見ても問題がない場合が多いです。多量に出る場合は、アレルギーの可能性があります。
また、感染症の初期は透明な鼻水が出ることがあるため続くようであれば注意が必要です。
・黄色や黄緑色(膿性)で粘り気がある
膿っぽい鼻水が出る場合は、感染症や異物の可能性が高いです。
重症化する可能性もあるため早めに動物病院を受診しましょう。
・赤色(鼻血)
鼻腔内の炎症がひどい場合や鼻腔内腫瘍、歯周病の可能性があります。
また、血が止まりにくくなる病気の場合も鼻血が出る可能性があるためすぐに動物病院を受診することをおすすめします。
検査
身体検査を行い鼻水の性状や顔の腫れ、口の中の状態を確認し、状況に応じてレントゲンや麻酔下での内視鏡、CT検査を行います。感染症が疑われる場合は、PCR検査や細菌培養検査を行うこともあります。
治療
感染症の場合は抗生物質や抗真菌剤などの飲み薬が処方されますが、軽症の場合は点鼻薬による治療で良くなることもあります。必要に応じて鼻の中を洗浄する鼻腔洗浄や吸入療法(ネブライザー)が行われることもあります。
腫瘍が原因の場合は、放射線治療や外科的切除などのその腫瘍に応じた治療が行われます。歯周病が原因の場合は、一時的に抗生物質を処方することもありますが根本的に治療するためには抜歯が必要になります。
鼻水に伴って鼻詰まりがあると、においを嗅げない影響で食欲がなくなることがあります。その場合は、においを強くするためにフードを温めるなどの工夫が必要になります。
また、歯周病がある場合は痛みでドライフードを食べることが難しくなることがあるため、フードをふやかしたり、ウェットフードに変更したりすると食べてくれることもあります。
鼻水の拭き取り方
ご自宅で拭き取れる場合は、ティッシュペーパーなどで優しく拭き取ってあげましょう。乾燥して固まっている場合は、人肌程度に温めた蒸しタオルなどでふやかしながら拭き取るときれいになります。
症状が軽度の場合気づかないことも多いため、日頃から愛犬や愛猫の様子を観察してあげましょう。
鼻水は軽度のものから早期発見が重要な腫瘍まで様々な原因を考慮する必要があります。また、鼻水以外にも呼吸音の変化や鼻周りの腫れなど少しでも異常を感じたら動物病院を受診してくださいね。