橈尺骨骨折

当院で実施した外科症例について紹介します。

今回は橈尺骨骨折の症例です。

※術中写真が表示されますので苦手な方はご注意ください。

 

プロフィール

犬 トイプードル 雄 0歳6ヶ月

 

来院理由

高いところから落下し、前足を挙げている

 

既往歴

なし

 

検査

身体検査:右前肢挙上

レントゲン検査:右橈骨および尺骨骨折

 

診断

右橈尺骨骨折

 

外科手術

受傷および上記の診断から3日後に橈尺骨骨折整復のためプレート固定法実施

1.皮膚を切開して骨折部位を露出

2.骨折部位を整復し、プレートとスクリューを用いて固定

3.術部を洗浄

4.皮膚を縫合

 

手術後の経過

術後3、6、9、15週でレントゲン検査を実施しており、経過良好

跛行および挙上もなし

 

橈尺骨骨折について

橈骨・尺骨は前腕を構成する骨であり、歩行において重要な骨になります。

そのため、これらの骨が折れてしまうと正常に歩くことができなかったり、痛みで足を着けなくなったりします。また、痛みが強いため骨折した足を触られることを嫌がることが多いです。

橈尺骨骨折は、トイプードルやポメラニアン、イタリアングレーハウンドなどの小型犬でよく見られ、さらに成長期での骨折が非常に多いです。

診断はレントゲン検査が一般的であり、両方の足を撮影して骨折部位の評価を行います。

骨が完全に折れてしまっている場合は手術が必要です。骨折部位は時間が経過するにつれて筋肉が拘縮して骨が変形することもあるため、早期に手術をすることが重要です。基本的には受傷後1週間以内に行います。

手術では、骨を元の形に戻した後、インプラント(金属ピンや金属プレート)を用いて骨折部位を固定します。適切なサイズ、種類のインプラントを使用しますが、骨折の種類や部位によっては二次診療施設などのより高度な技術や器具が必要なケースもあり、それらの判断も重要になります。

今回の症例のように骨折は高いところや抱っこしている状態から落ちてしまうことで起こるケースが多いですが、普段上り下りしているソファーから降りて骨折することすらあります。ヒトにとっては低い場所でも犬からすると高いことも多いため注意が必要です。

特に成長期に骨折をしてしまうと骨の成長に影響を与えてしまう場合もあるため、足を痛がる、挙げっぱなしなどの症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。

この記事を書いた人

海野(獣医師)
一人一人に寄り添った診療ができるようご家族様の話に耳を傾け、お気持ちを汲み取れるように心がけています。外科、救急医療分野の技術向上のため多くのセミナーを受講し、腕を磨いている。趣味はバイオリンと映画鑑賞。アクションやSFが好きでスターウォーズのダースモール推し。