麻酔・手術に対する当院のポリシー policy
- 麻酔処置が必要な状況かどうかの正確な判断・診断をしていきます。
- 動物たちに対して優しいハンドリングを心がけます
- 十分な疼痛管理の実施をしていきます
- それぞれの動物の状態、性格に応じた麻酔・疼痛計画をプランニングします
- 麻酔担当者を配置し適切なモニタリングをした麻酔管理を行います
ペインコントロールについて
自分が手術を受けるとしたら、その手術が小さなものであれ、大きなものであれ、怖いな、痛いだろうなと不安になると思います。
もちろん動物たちも痛みを感じますし、手術を受ける意味合いを理解していない分、痛みや不安はなおさら強く感じるのではないかと考えています。
「痛み」は各個体の感覚的なものであり、定量的に測ることが難しい体の異常です。それを表現することが苦手な動物も多く、特に手術後は過小評価されがちです。痛みの管理をしっかりとすることは、動物たちの精神的な不快感や恐怖の軽減にもつながります。
さらに、痛みがあると麻酔中の体に悪影響が生じ、術後も手術の傷の治癒が遅延するとことから、積極的に疼痛に対する対策をしていく必要があります。
手術内容などから予想される疼痛の程度を予測し、病気の種類や基礎疾患によって使えない薬剤ではないかなどを考慮したうえで、適切な鎮痛薬を選択していきます。
強い痛みが予想される手術には、鎮痛剤を事前に投与することで、手術終了後に鎮痛剤を使用するよりも術後の疼痛が軽減されるとされており、この「先取り鎮痛」をほとんど全ての手術症例で推奨しています。
また、単一の鎮痛薬では疼痛を制御しきれないことも多いため、痛みを感じる経路を総合的に抑える「マルチモーダル鎮痛」も取り入れています。痛みは障害部位からの刺激が脊髄を通って脳で認識されます。薬剤によって鎮痛効果を発揮する部位が異なるため、作用の異なる複数の鎮痛剤を使用することで疼痛刺激をより和らげ、痛みをブロックするようにしていきます。
また、「痛み」以外にも、動物病院という慣れない環境は、入院した動物に対し「不安」を引き起こし、この不安が痛みを増幅させると言われています。そのため、薬での化学的な対策以外にも、清潔な環境下での適切な看護と優しい取扱いで、可能な限り不安を小さくできるよう努めています。
当院で使用する鎮痛剤
- ・NSAIDs
- ・非麻薬性オピオイド(ブプレノルフィン ブトルファノール)
- ・麻薬性オピオイド(フェンタニル モルヒネ)
- ・ケタミン(麻薬)
- ・局所麻酔薬
- ・ガバペンチン
術後の保護具
手術後には疼痛がなくても傷口のひきつれなど違和感を感じて、舐めたりかじったりしてしまう子がいます。当院では、傷口を保護する保護具を用意しております。その子の性格、好み、傷の部位や状態によっては保護具の種類を選ぶこともできますのでご相談ください。一般的なプラスチック製の術後保護具です。
透明なので視界を遮ることもありません。
違和感がなく、身動きも取りやすい術後服です。
より動物にストレスをかけずに過ごしていただけます。
手術までの流れ
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診察
まずは病歴、治療歴の確認や今までかかった病気(既往歴)、ご自宅での様子などのお話を聞かせていただきます。また、その子の状態を診させていただき、身体検査はもちろん、性格や心理状態の把握などをしていきます。飼い主様のご意向もお伺いしたうえで手術について相談させていただきます。 -
検査
診断や治療のためにはどのような検査がなんのために必要かをご説明させていただいたうえで、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、細胞診検査などの各種検査を行い、病変部位および全身の評価をしていきます。その結果によって手術の必要性および手術が受けられる状態かどうかの判断をしていきます。手術をするメリット以上にリスクやデメリットが大きい場合には、再検査や手術以外の治療法もご提案させていただきます。 -
手術計画・飼い主様へのご説明
病変部位、全身状態の把握ができたら、合併症や起こりうる障害などを検討し、手術および疼痛管理の計画を立てます。そのうえで、飼い主様へのご説明を行い、ご家族の同意が得られた時点で手術の予定を組みます。 -
手術準備
全身麻酔を予定した手術の当日には絶食をお願いしております。継続している投薬内容によっては、当日朝も投与していただくことがあります。事前に手術、疼痛管理を再度検討し、手術開始前までに薬剤の準備を行います。点滴や薬剤の投与経路として、入院お預り後に血管カテーテルを留置し(予期せぬ緊急時にも備え、原則全ての手術症例で血管カテーテルを留置しています)、必要に応じて手術前から点滴を開始します。
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麻酔・手術
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術後ケア
入院中について
安心して入院してもらえるように、入院設備や入院環境には細心の配慮をしています。犬、猫など動物種によって入院室が分かれており、24時間エアコン、換気、空間除菌脱臭機による空調管理も行っています。また、看護師を中心として看護記録を作成し、術後早期の回復・退院を目指してスタッフ全員でケアしていきます。普段の環境にできる限り近づけたいと考えていますのでご自宅での環境や様子なども詳細にお伺いいたします。ご面会は診察時間内でお願いしております。※手術の種類や、面会後に興奮し過ぎてしまう性格の子の場合は面会を控えていただくこともございます。 また、入院時の様子をお電話やSNSにてお伝えすることも可能です。退院後について
退院時には基本的に合併症もなく一般状態が良好なことを確認してお返しいたします。術後に内服薬を処方する際にはご説明をさせていただきます。帰宅後はすぐにはしゃぎ過ぎてしまう子や安心してぐっすり寝てしまう子など様々ですので、安静にしてよく様子を見てあげてください。また、同居の犬猫からは病院の匂いがして嫌がられることもありますので、時間を置いてから会わせるようにします。良好な経過であれば、手術から1〜3週間後に通院での抜糸となります。
当院で実施可能な手術一覧
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眼科
■緑内障 ・眼球摘出 ・義眼挿入 ■角膜炎 ・眼瞼縫合 ・瞬膜フラップ ■眼瞼腫瘤 ・眼瞼腫瘤切除 ■眼科形成外科 ・眼瞼内反/外反整復 ■チェリーアイ ・チェリーアイ整復 -
皮膚
■外耳炎 ・耳血腫整復 ・垂直耳道切除 ・総耳道切除 ■中耳炎 ・腹側鼓室胞切開 ■ヘルニア ・腹壁ヘルニア整復 ・鼠蹊ヘルニア整復 ・臍ヘルニア ■その他 ・断尾 ・抜爪 -
口腔
■歯周病 ・抜歯、口腔粘膜フラップ形成 ■口内炎 ・全臼歯抜歯 ■唾液腺炎 ・唾液腺摘出 ■その他 ・口蓋裂整復 ・声帯切除 -
呼吸器
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消化器
■消化管生検 ・内視鏡下生検 ・腸全層生検 ■消化管内異物 ・内視鏡下異物除去
・胃切開 ・腸管切開 ・腸管端々吻合■幽門狭窄 ・幽門形成術 ■胃拡張胃捻転 ・胃捻転整復、胃固定術 ■食道裂孔ヘルニア ・食道裂孔ヘルニア整復 ■会陰ヘルニア ・会陰ヘルニア整復 ■巨大結腸 ・結腸亜全摘出手術 ■栄養支持 ・咽喉頭チューブ設置 ・胃瘻チューブ設置 ・経腸チューブ設置 -
内視鏡
■消化管生生検 ・内視鏡下生検 ■上部消化管異物 ・内視鏡下異物除去
■上部気道異常 ・喉頭動的評価 ・咽頭異物除去 -
肝胆道系
■肝臓腫瘤 ・肝生検 ■胆嚢粘液嚢腫 ・胆嚢摘出 ■門脈体循環シャント ・門脈体循環シャント 整復
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泌尿器
■尿路結石 ・膀胱切開 ・尿管切開 ・SUBシステム設置術 ・尿路変更術 ■膀胱ポリープ ・膀胱部分切除 -
生殖器
■子宮蓄膿症 ・子宮卵巣摘出 ■前立腺炎 ・前立腺腫瘍切開術 ■帝王切開 ・帝王切開 -
整形外科
■長骨・四肢骨骨折 ・プレート ・創外固定 ■前十字靭帯断裂 ・TPLO ・関節外法 ■膝蓋骨脱臼 ・膝蓋骨脱臼整復 ■骨盤骨折 ・骨盤骨折整復 ・仙腸関節脱臼整復 ■レッグペルテス ・大腿骨頭切除 ■椎間板ヘルニア ・ヘミラミネクトミー ・ベントラルスロット -
循環器
■動脈管開存症 ・PDA整復 ■心タンポナーデ ・心膜切除術 -
腫瘍
■皮膚腫瘍 ・皮膚腫瘤切除 ・皮弁形成 ■四肢の腫瘍 ・断脚 ・断指 ■乳腺腫瘍 ・乳腺領域切除 ・乳腺片側全摘出 ・乳腺両側全摘出 ■肺腫瘍 ・肺葉切除術 ■口腔内腫瘍 ・口腔内腫瘤切除 ・下顎骨切除 ・上顎骨切除 ■消化管腫瘍 ・胃亜全摘出術 ・直腸プルスルー ・腸管端々吻合 ■肛門腫瘍 ・肛門嚢摘出 ・肛門腫瘤摘出 ■肝臓腫瘍 ・肝臓部分切除術 ・肝葉切除 ■膵臓腫瘍 ・膵臓部分切除術 ■膀胱腫瘍 ・膀胱全摘出 ・尿路変更術 ■腎臓腫瘍 ・腎摘出 ■精巣腫瘍 ・精巣摘出 ・潜在精巣摘出 ■卵巣腫瘍 ・子宮卵巣摘出 ■脾臓腫瘍 ・脾臓摘出 ■甲状腺腫瘍 ・甲状腺摘出 ■その他 ・診断的開腹 ・リンパ節切除